2009 Fiscal Year Annual Research Report
非線形分光法によるイオン液体中のエネルギーおよび分子ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
17073012
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60221925)
|
Keywords | イオン液体 / 二酸化炭素 / 溶媒和ダイナミクス / トリヨウ化物イオン / 光解離反応 / プロトン移動反応 / ドメイン構造 |
Research Abstract |
本研究では、非線形分光法の一種である過渡回折格子法(TG)法やその他種々のレーザー分光法を、種々のイオン液体やイオン液体中の反応系に適用し、イオン液体の構造と反応性の解明を進めていくことを主な目的とする。今年度、主に以下の3項目にわたって大きな成果を挙げた。 (1) イオン液体/二酸化炭素混合系 イミダゾリウム系のイオン液体に対して二酸化炭素加圧下でのX線小角散乱の実験を行い、イオン液体中でのドメイン構造が二酸化炭素の加圧によりほとんど破壊されないことを見出した。また混合系での溶媒和ダイナミクスの測定を世界で初めておこない、緩和時間の変化が溶質の並進拡散定数の変化と非常によい相関をしめすことが明らかとなった。 (2) 光解離ダイナミクス トリヨウ化物イオンの光解離ダイナミクスの測定を種々のイオン液体中で行い、光解離の直後には、周りの溶媒にとりかこまれたケージ中でのジヨウ化物イオンとヨウ素のコンタクトペアを生成し、その後60ps程度ですべて再結合することが明らかとなった。またヨウ化物イオンが過剰の条件では、ヨウ素とヨウ化物イオンの反応が生じ、これが特異な反応量子収率をもたらすことを見いだした。 (3) 分子内プロトン移動反応と溶媒和 ヒドロキシフラボン系の電子励起状態におけるプロトン移動反応を、光カーゲート法により超高速時間分解で測定した。その結果プロトン移動速度は少なくとも異なる二つの時間スケールにて起こり、極性の低いイオン液体のほうが速い成分が大きいことがわかった。このような挙動がイオン液体の不均一性を結びついている可能性があり、今後より詳細な検討が必要である。
|