2006 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体を電解液に用いたナノ構造体の電気化学的構築
Project/Area Number |
17073014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑畑 進 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40186565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷松 大祐 大阪大学, 大学院工学研究科, 助手 (80333847)
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Keywords | イオン液体 / ナノ構造体 / 電子顕微鏡観察 |
Research Abstract |
当研究グループは、ナノレベルの電気化学反応を行ってきており、それによって溶媒や電解質の役割を明確にできることを明らかとしてきた。そこで、イオン液体を用いてそれらの反応を行うことにより、イオン液体の電解質と溶媒としての挙動を電気化学的に観察することが本研究の目的である。さらに、それによって得られた知見を基に、新たなナノ構造体の構築法の開発を目指す。 また、そのような研究を行っている間に、イオン液体を電子顕微鏡で直接的に観察できるという発見をした。これは、濡れたサンプルを電子顕微鏡で観察できることを意味し、さらには、電気化学反応を行いながら、in situに電子顕微鏡観察することを可能とする。本年度は、それらについて検討した。 1.イオン液体中におけるナノ構造体の調製 イオン液体中でチオールの自己集合単分子膜の電解還元脱離反応を行えることを見出した。その挙動を詳細に調べたところ、水溶液中とは全く異なる挙動であった。その挙動をデジタル・シミュレーションを用いて解析した結果、チオールが脱離する際、チオレートアニオンとして溶液中に溶けていくこととなるが、その際、イオン液体のカチオン種はチオレートアニオンの電荷補償イオンとして働き、イオン液体のカチオン種は溶媒として作用することを明らかとした。 一方、イオン液体中での金属のアンダーポテンシャル析出を行ったところ、これも水溶液中と異なる挙動が見出された。その挙動は、イオン液体のアニオン種の種類で大きく変化し、疎水性アニオンを用いた場合、アンダーポテンシャル析出によって金属の単原子層アイランドが形成されることを見出した。 2.イオン液体で濡らしたサンプルの電子顕微鏡観察 イオン液体を試料台に乗せ、それを走査型電子顕微鏡(SEM)の真空チャンバに入れ、20KeVの加速電圧で観察した。液滴はチャージアップすることなく観察できた。これは、イオン液体中に加速電子が透過することを示す結果といえる。つまり、SEM観測において、イオン液体が電子伝導性物質のように振舞うということなので、イオン液体を絶縁性物質に伝導性を付与する試薬としての利用できる。SEMのみならず、透過型電子顕微鏡(TEM)においても、イオン液体は観測の邪魔にならないことが、今年度の研究によってわかった。
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