2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境に適応するための高次行動を制御する神経生理機構のシステム的理解
Project/Area Number |
17075001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青沼 仁志 Hokkaido University, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
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Keywords | 社会適応 / 昆虫 / 闘争行動 / 神経修飾機構 / 一酸化窒素 / 生体アミン / システムモデル / シミュレーション |
Research Abstract |
多くの生物は, 刻一刻と変化する環境に応じて状況に応じた行動を選択し発現することで適応してきた. 生物が構築する社会は, 環境要因のひとつとみなすことができる. 個体が複数集まり集団や社会を構築すると, 動物は, その社会環境に応じて適応的に行動を発現する. この動物に特有の, 社会適応の機能を司る神経生理機構を明らかにするため, 昆虫のクロコオロギを実験対象として, 社会行動のひとつである闘争行動を題材にして研究を進めている. コオロギの闘争行動は, 体表のフェロモン物質により解発されるフェロモン行動のひとつである. 直翅目昆虫のクロコオロギで見られる闘争行動の発現機構を理解するため, フェロモン情報の処理にかかわる脳内の神経細胞間の接続様式や, ネットワーク接続様式について, 昨年に引き続き詳細に調べた. また, コオロギの攻撃行動を誘発するフェロモン候補物質の同定と有機合成を行った. クロコオロギの闘争行動では, 勝敗の結果が社会的な経験として, その後の行動選択を左右する. この過程でみられる行動選択を司る神経生理機構を理解するため, 闘争経験により変容する神経生理機構にについて, 一酸化窒素シグナル系とオクトパミン系の働きに注目し, 行動薬理学的な実験を進めた. 個体間相互作用による行動発現や行動選択の神経機構の研究から得られた知見を用いて, 工学研究グループと共同で動的モデルを構築し, そのシミュレーションを行い妥当性の検討と生物学研究による検証を進めている.
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