2008 Fiscal Year Annual Research Report
フェロモン行動を行う昆虫の社会性発現機構の構成論的理解
Project/Area Number |
17075005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 順 The University of Tokyo, 人工物工学研究センター, 教授 (50233127)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淺間 一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50184156)
川端 邦明 理化学研究所, 分子生命情報科学特別研究ユニット, ユニットリーダー研究員 (90301754)
|
Keywords | 移動知 / コオロギ / 群行動 / 自己組織化 / 数理モデル / 微分方程式 |
Research Abstract |
クロコオロギの喧嘩行動を対象として,(a)コオロギの内部モデル構築から集団挙動の再現を目指すボトムアップ的モデル化手法と,(b)センサ系のマルチモダリティから内部構造を推定するトップダウン的モデル化手法,(c)コオロギの発達と成長を考慮した長時間モデル化手法の三種類の研究を行い,相互に議論しながら全体像の構築を目指してきた. クロコオロギ単体と集団的挙動との関係を表す行動モデル化について述べた.実験およびシミュレーション結果より,クロコオロギは,(i)以前喧嘩で勝った相手・負けた相手の識別はしていない.また(ii)対戦相手の優位さの識別もしていないことがわかった.すなわち,負けコオロギが他個体と接触し,喧嘩・回避行動の選択を行う際,他者情報を用いていないと解釈できる. クロコオロギの神経生理モデルに基づいた群挙動の検証を行った.触角からの感覚入力感受性を導入したモデルは個体レベルで見せる行動の変容と群レベルで見せる行動の変容を同時に説明可能なモデルであることが確認できた. クロコオロギの生育環境と成長の関係を表すモデル化を行った.勝ち負けの効果比を1:Fとしたときの定性的解析を行った。生物の知見に合うのはF>1が必要であることが分かった.結果として,コオロギは勝ちよりも負けを重視するということが確認された. 全体を総合すると,さまざまな時空間階層におけるクロコオロギ喧嘩行動のモデルを構築し,シミュレーション等で評価を行い,コオロギの内部機構に関する仮説形成が可能となった.
|