Research Abstract |
本研究項目の目的である,「予測困難な動的環境下における生物の迅速な環境認知・運動適応戦略の神経機構の解明」を達するため,本年度は(1)未経験の粘性力場における上肢到達運動学習,および(2)未経験の仰角を持つ斜面上の二足歩行ロボットの適応的歩行制御,について研究を進めた.前者では,たとえば手先変位・速度に比例した大きさの外力が運動方向と直交する方向に加わる等,日常では経験することのない力場環境を複数種用意し,各環境で到達運動を繰り返し学習させた.その際,環境の提示順序を入れ替えたり,2種類の環境を重ね合わせた環境で学習させるなどすることで,学習によって被験者が獲得した感覚運動連関の内部表現の汎化特性について考察を行った.また,到達運動中の手先剛性,筋活性の計測も行い,環境変化を予測して適応的に戦略を変更していることなどを示唆する結果を得た.なお生体の運動意図を計測し制御に応用することを目的として脳波計則装置,マルチテレメータシステム一式を本実験系に設備導入した. 一方,後者の斜面上の二足歩行制御系は,歩行周期を決定する位相振動子と,位相から各脚の関節軌道を一意に決定する運動学的パラメタ(歩幅,路面の傾斜角度),およびこれらのパラメタを必要に応じて変更・修正する状態認識器,学習器などから構成される.二足歩行ロボットが,斜面の角度変化に自律的に適応して歩行を継続するためには,「環境認知」の結果に基づいて「適切な運動学的パラメタ(身体自由度を拘束するという意味で拘束条件と呼ぶ)を想起」できる必要がある.今年度は,リカレントニューラルネットワーク,およびk-最近傍法を用いた実装手法を提案した.
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