2008 Fiscal Year Annual Research Report
力学的刺激に対する細胞の感知・応答の分子機構と組織構築技術への応用
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17076002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 譲二 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (20159528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 希美子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00323618)
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Keywords | 血管 / 血流 / 勇断応力 / 内皮前駆細胞 / 動静脈分化 / 転写因子 |
Research Abstract |
内皮前駆細胞(EPC)は骨髄から末梢血に動員され、組織で血管形成を起こすことから、虚血組織の血管新生療法に応用されている。EPCは血流や組織液の流れに起因する流れ剪断応力(shearstress)を受ける。これまでの検討で、我々は勇断応力がEPCの増殖と成熟内皮細胞への分化を促進することを明らかにしてきた。本年度はEPCが剪断応力に反応して動脈あるいは静脈のどちらの内皮細胞へ分化するかを検討した。人末梢血から培養したEPCに流れ負荷装置で定量的な剪断応力を負荷したところ動脈内皮細胞のマーカーであるephrinB2、Notch1/3、Hey1/2、AI.K1のmRNA1/ベルは増加し、一方、静脈内皮細胞のマーカーであるEphB4、NRP2のmRNAレベルは低下した。このephrinB2の増加とEphB4の減少はともに剪断応力の強さに依存していた。剪断応力によるephrinB2の遺伝子発現の増加はephringB2蛋白の発現増加を伴っており、mRNAの安定化ではなく転写の亢進に基づいていた。ephrinB2遺伝子のプロモーターのdeletion解析により剪断応力のシスエレメント(応答配列)は転写開始点より5'上流106bp以内にあることが示された。この領域にある転写因子Sp1の結合モチーフの塩基配列に変異を入れたところ剪断応力によるephrinB2遺伝子の転写の亢進が起こらなかった。EMSAとクロマチン免疫沈降法により剪断応力がSp1結合モチーフに結合するSp1を著明に増加させることが示された。これらの結果から剪断応力がEPCに作用するとSp1を介してephrinB2の遺伝子発現を増加させることで、静脈ではなく動脈の内皮細胞へ分化を誘導することが示された。
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