Research Abstract |
大腸菌などのプロトンモーターとビブリオ菌などのナトリウムモーターとのキメラ菌体を元に,回転メカニズムなどのエネルギー変換機構,走化性などの情報伝達機構の解明を目指し,研究を行った.そして,エネルギー変換機構については,イオンの流れと回転との関係,モーターユニットの数と回転数・発生トルクとの対応,モーターユニットの数と回転ゆらぎとの対応などについて実験を行い,トルク発生機構のメカニズムを明らかにしていった.さらに回転モーターの動作機構のモデルを構築し,その理論的挙動と実際の運動との対応をはかった.また,情報伝達機構の解明においては,走性のレセプターの構造,局在,メカニズムの解明,さらには,レセプターからモーター部への情報の流れの可視化,などを重点的に行った. 回転計測ついて,バクテリアべん毛モーターにアクトミオシン,キネシンなどと同様にステップ状の運動があるかどうかは,回転が確認された70年代より問題とされていた点であり,ステップのあるなし,その大きさについてはイオンの流れと回転という機構を考える上で,非常に重要な問題である. 我々は,1)キメラ菌体を用いることにより,イオン濃度を制御できた,2)ステーターの発現量を制御することにより,1ユニットでの回転を計測できた,3)大腸菌を用いることにより,精度の高い計測が可能となった,4)新しい計測手法を用いることにより,ナノ計測分解能が向上した,などの点の向上により,世界で初めて1回転注のステップを計測することに成功した.そのステップの大きさは約14度であり,一回転中に26ステップ存在することとなる.この数は,ローター中のタンパク,FliGの数と一致し,ステーターがFliGと相互作用して回転トルクを生み出していることを強く示唆している.今後は,さらにステップの詳細について調べていく予定である.
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