Research Abstract |
バクテリアベん毛モーターは直径が高々40nmの回転モーターであり,その原動力は,細胞内外のイオン濃度差であり,種により,プロトン,ナトリウムが用いられる.我々はこれら2種類を融合したキメラ菌体を作成した.我々はこのキメラ菌体の基本的な性質を明らかにすることを試みた.その結果,キメラ菌体のトルクー速度関係は元となる二つのモーターと同様の回転-トルク特性を持つことがわかった.さらに,固定子の発現量を調整することにより,固定子のモーターへの組み込みとともに回転速度が段階的に上昇することを観察できた.この特性は,プロトン,ナトリウム型共通の性質であり,三者とも共通のメカニズムで機能していることを示唆するものである.さらに,遺伝子改変モーターを作成し,その回転-トルク特性を評価したところ,最大回転速度のみが変化したもの,最大回転速度と最大発生トルクが変化した菌体を作成することに成功した.このことは,モーターの出力メカニズムを明らかにする上に置いて重要な知見となる.本研究成果は,専門誌へ投稿し,2008年に発表された(Inoue,et.al.,JMB,2008). また,モーターを構成する,固定子が恒常的にモーターに存在しているのではなく,外部環境に応じて,離合集散を繰り返していることを見いだした.具体的には,外部イオン(Na^+)濃度が高い場合には,固定子はモーターに局在し,イオン濃度が減少すると,モーターから離れていく.このことは,細胞内分子メカニズムを考える上でも非常に有益な知見となる.現在,生命科学系専門誌に投稿中である. さらに,一つのモーターには様々なタンパク質によって構成されているが,その中で,回転子を構成する,Fli-G,M,Nにおいて,細胞中での交換反応が起こるかどうかを検討した.その結果,Fli-Gにおいては,交換反応が起きないが,Fli-M,Nにおいては,交換反応が起こることを見いだした.現在,投稿に向けてデータ収集中である.
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