Research Abstract |
当該年度の研究目的は, バクテリア1菌体中のマルチモーターの同時計測, 大腸菌走化性受容体の相互作用の計測, である. マルチモーター計測においては, 従来のフォトダイオードを用いた計測では不可能なため, ハイスピードカメラを用い, 画像解析から回転の計測を試みた, そのために必要なカメラの選定, 購入, 解析ソフトの作成などを行った. 現時点までに複数モーターの解析に成功した. 同一菌体内のモーターの回転速度, 回転ゆらぎ, そして回転方向の変換タイミングは非常によい相関を示し, 他菌体のモーターとの相関はほとんどなかった. しかし, 現時点ではカメラの性能が律速段階(1250フレーム/秒, 感度)になっており, その対策を検討中である. また, 相関の強さ, 位相のずれ, など興味深い情報が得られてきているが, まだ生命現象との対応が付いていない. 今後, 外部からの刺激に対する応答などを検討する予定である. べん毛モーターを制御する走化性情報伝達系について, 以下のことを明らかにした. (1)大腸菌異種走化性受容体同士が相互作用し, それがシグナル伝達に関与すること, (2)大腸菌走化性受容体の膜貫通領域直下のHAMPドメインが受容体の極局在に関与すること, (3)細胞膜中での大腸菌走化性受容体の動きは細胞骨格またはそれに付随する構造により制限されること, (4)大腸菌走化性受容体による温度刺激の受容には膜外ドメインは必須でないこと, (5)コレラ菌病原性に関与する走化性受容体およびそれと相同性の高い受容体は, それぞれ多数のアミノ酸を受容すること, (6)後者は, 培養温度により発現量が変化すること, (7)コレラ菌走化性類似シグナル伝達系は微好気条件下でのみ極局在を示すこと.
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