Research Abstract |
当該年度の研究目的は,バクテリア1菌体中のマルチモーターの同時計測・相関解析,大腸菌走化性受容体の相互作用の計測,である. マルチモーター計測においては,従来のフォトダイオードを用いた計測では不可能なため,ハイスピードカメラを用い,画像解析から回転の計測を試みた.そのために必要なカメラの選定,購入,解析ソフトの作成などを行った.現時点までに複数モーターの解析に成功した.同一菌体内のモーターの回転速度,回転ゆらぎ,そして回転方向の変換タイミングは非常によい相関を示し,他菌体のモーターとの相関はほとんどなかった.また,レセプターとの関係を求めるため,レセプター構成タンパク質の一つである,CheWにGFPを融合させ,その局在を蛍光観察により確かめた.その結果,レセプターに近いモーターが常に回転の転換が遠い方のモーターに先んじていることを見いだした.この結果は,モーターの回転の転換が,レセプターからの情報によるものであることを強く示唆している. べん毛モーターを制御する走化性情報伝達系について,以下のことを明らかにした.(1)大腸菌走化性受容体による温度刺激の受容には膜外ドメインは必須でないこと,(2)大腸菌の忌避物質であるNi^<2+>イオンは,通説と異なり,アスパラギン酸受容体の膜外ドメインに直接結合すること,(3)細胞膜中で大腸菌走化性受容体は動きながら会合していくこと,その動きは細胞骨格またはそれに付随する構造により制限されること,(4)コレラ菌病原性に関与する走化性受容体およびそれと相同性の高い受容体は,それぞれ多数のアミノ酸を受容し,それらのアミノ酸は直接受容体に結合すること,(5)コレラ菌走化性受容体には,培養温度により発現量が変化しないものと,温度が上昇すると発現量が上がるもの,下がるものがあること,(6)コレラ菌走化性シグナル伝達系タンパク質群は常にべん毛のある細胞極に局在するが,それと相同なシグナル伝達系のタンパク質群は微好気条件下でのみ極局在を示すこと.
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