Research Abstract |
EBV人工染色体の細胞内移送と安定化の解析については,京大・吉村博士との共同研究で,on substrate cell lysis法と共焦点レーザー顕微鏡を組み合わせた解析を行なった。その結果,EBV人工染色体をHeLaS3細胞に導入した際,oriPとEBNA1が,核内のへテロクロマチン領域に共局在すること,また染色体に対するEBNA1の結合親和力は,oriPの共存によって高まることなどが認められた。この結果は,EBV人工染色体が娘細胞へ確実に分配され,宿主細胞内で安定的に維持される為の重要な機構であると考えられる。 また,EBV人工染色体の細胞内移行の効率に,DNAの高次構造が与える影響を検証する目的で,京大・吉川教授との共同研究で,EBV人工染色体の高次構造変換を行い,電気穿孔法による細胞内導入を行った。その結果,DNAのコンパクションにより,細胞内への移送と遺伝子発現は明らかに増加した。この知見は,さらなる高効率遺伝子送達技術の開発に繋がるものと思われる。 一方で,遺伝子の機能解析とその応用に関しては,EBV人工染色体による生体内導入発現技術により,IL-27,IL-28,IL-33等の機能解析を行なった。その結果,たとえばIL-27がNK細胞を活性化する等,新たな作用が多数見出され,これらは,新しい癌の免疫療法の開発に繋がる可能性がある。さらに,A03班・東京農工大・森島教授との共同研究で,骨格筋における遺伝子発現制御を生体組織アクチュエーターに応用する研究を,A01班・東京医科歯科大・秋吉教授との共同研究で,ナノDDSに人工染色体を封入する研究を行なった。これらの結果は,EBV人工染色体のシステム細胞工学への新たな応用の可能性を開くと考えられる。
|