Research Abstract |
本研究では, 脳血管疾患や冠状動脈疾患等の血管疾患を対象とし, 医用断層撮影法により得られる個人情報に基づいて, (1)患者個々人の疾患状態に応じて適切な形状の血管構築用scaffoldを設計, 製作し, (2)同scaffold上に血管内皮細胞を形成することによって極細径人工血管を実現するとともに, (3)同極細径人工血管を, 経血管的アプローチにより低侵襲にて対象疾患領域に埋設するための人工血管デリバリデバイスを実現し, 現在の治療法に代わる革新的な医療技術を確立することを目的とし, 以下の研究を行った. (1) Tailor-made3次元人工血管scaffoldの改良 これまでの生分解性材料による人工血管は, ボア径が小さく, 孔の連結性に乏しいものであった. 孔の連結性を高め, 多孔度を制御するために, 新たに生分解性材料の微粒子を用いたscaffold構築方法を検討した. また, scaffold構築方法として, インクジェットを利用できるか検討を行った. この結果, ディスポ構造を有するインクジェット機構をマイクロ流体チップに取り付けた構造を考案することができたが, 微粒子がチップ内部で詰まる問題が生じたため, 今後改良が必要である. (2) 血管scaffoldの形状/物理特性の評価 傾斜構造を有するscaffoldをソルトリーチング手法により構築し, その特性(形状/物理特性)を評価し, 人動脈壁の縦弾性係数と血管壁厚を再現できることを確認した. (3) 血管内皮細胞の行動形態調査 円形断面を有する毛細血管・細動脈モデルを構築し, 生分解性材料により微小な流路を作成した. また, この流路内において, 血管内皮細胞がどのような行動形態をとるか, 表面状態, 空間形状や流速条件を調整して, 長時間培養しながら観察・評価するシステムを構築した. 構築した流路内にて, 培養過程をモニタリングし, ガスの透過性が重要である知見を得た.
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