2007 Fiscal Year Annual Research Report
複製フォークと相同組換えの共役による遺伝子増幅制御の研究
Project/Area Number |
17080010
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小林 武彦 National Institute of Genetics, 細胞遺伝研究系, 教授 (40270475)
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Keywords | 若返り / DNA複製 / ゲノムの不安定性 / 酸化タンパク質 / 出芽酵母 / リボソームRNA遺伝子 / 細胞老化 / リボソーム |
Research Abstract |
出芽酵母は出芽により殖える単細胞真核生物である。1つの細胞(母細胞)は約20回の出芽後老化して死ぬことから、以前より老化のモデル生物として研究されてきた。昨年までの報告者らの研究によりリボソームRNA遺伝子(rDNA)の複製開始活性を低下させた株では、rDNAが不安定化し寿命が短縮することが見いだされた(論文作成中)。この研究以前にもrDNAと老化との関係を示唆する報告が複数なされており、それらを元に報告者は両者の関係を説明する仮説を提唱している(老化のrDNA仮説、BioEssay,2008)。この仮説では、rDNAの不安定化はリボソームの質と量の低下を引き起こし、細胞機能の根幹である翻訳活性を低下させることで、細胞老化を誘導すると考えている。ただ酵母の老化は母細胞でのみ起こり、娘細胞では逆に「若返り」を起こす事が知られているが、rDNA仮説ではこの母、娘細胞での違いが生じる理由を説明できないという問題点があった。つまりなぜ複製された同じrDNAが母細胞のみで老化を引き起こすのか不明であった。 今年度はこの問題を解決するため、エルトリエーターで母と娘細胞を分取しそれぞれのrDNAの安定性をパルスフィールド電気泳動で解析した。その結果、母細胞ではrDNAの安定性が低下していたにも関わらず、娘では回復していた。またコントロールとして行ったrDNA以外の領域では母、娘細胞で染色体の安定性には、ほとんど差が見られなかった。以上のことから老化にともない母細胞特異的にrDNAの不安定化が起こっていることが判明した。この母と娘を区別化するメカニズムについてはまだ不明であるが、1つの可能性として出芽酵母では傷ついた酸化タンパク質のいくつかが母細胞側に蓄積する事が知られており、rDNAの安定性維持に関わるタンパク質もその中に含まれているのではないかと考えている。今後解析を進めていく。
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Research Products
(17 results)