2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17080015
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
正井 久雄 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 参事研究員 (40229349)
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Keywords | Cdc7キナーゼ / DNA複製 / 染色体安定性 / 染色体接着 / 減数分裂期組換え / チェックポイント / 複製フォーク / ヘテロクロマチン形成 |
Research Abstract |
Cdc7は、酵母からヒトまで保存されたキナーゼで、DNA複製の開始を制御すると考えられている。複製開始の重要な標的はMCMであり、MCM2,4,6タンパク質のN末端をCdkと共同してリン酸化することにより複製複合体の成熟を促進することを明らかにした。動物細胞と分裂酵母における遺伝学的解析から、Cdc7機能の欠損により細胞は核内にDNA損傷を蓄積することが明らかとなった。分裂酵母ホモログのHsk1はswi1およびswi3(複製フォーク保護複合体の因子)と遺伝的、物理的に相互作用し、DNA損傷存在下での複製フォークの適切な停止に異常があることが示された。また、複製フォーク停止により誘導されるチェックポイントキナーゼの活性化にCdc7は必要とされる。動物細胞においてはCdc7欠損下で、複製フォーク停止に応答したATRの活性化は起こるが、Claspin(Mrc1ホモログ)のリン酸化およびクロマチン結合に異常があることが明らかになった。Cdc7はClaspin(Mrc1)と相互作用し、in Vitroでこれをリン酸化する。これらの事実から、Cdc7は複製フォークでswi1/swi3/Mrc1と相互作用しつつ、フォークの安定な維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。さらに、我々はhsk1あるいはhim1の変異がmrc1の欠損により相補されることを発見した。Mrc1は何らかの機構で複製開始あるいは複製フォーク形成を阻害しており、Cdc7はその阻害を解除するために機能している可能性が示唆された。 Cdc7変異は、減数分裂の過程に重篤な影響を与える。分裂酵母を用いた解析から、Cdc7は減数分裂前DNA複製ではなく組換え開始とくにDSB形成に必須な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、減数分裂が全く進行しないことからCdc7は分裂過程においても重要な機能を担っている可能性がある。 Cdc7キナーゼはこの他に、姉妹染色分体の接着、セントロメア領域におけるヘテロクロマチン形成、遺伝子サイレンシング、あるいはバイパスDNAポリメラーゼによる紫外線誘導変異形成さらに、M期の進行などにも関与していることが我々および他のグループから報告されている。また、分裂酵母ではhsk1と相互作用する分子として姉妹染色分体接着に関与するMcl1/Ctf4/AND-1を同定した。これらの多様な染色体動態制御におけるCdc7の基質の同定と作用機序の解析をすすめている。 がん細胞においてはCdc7欠損により、細胞はS期停止の後に、異常な細胞分裂に進行して死滅するが、正常細胞ではG1期に停止して細胞死を回避する。このことから、Cdc7を標的とした創薬の可能が指摘された。
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Research Products
(15 results)