Research Abstract |
申請者らは小胞輸送に介在する低分子量G蛋白質Rab5とその相互作用分子に関わる解析を進め,Rab5結合分子としてRIN2とRIN3を新たに同定した。RINファミリーにはRab5を活性化するグアニンヌクレオチド交換(GEF)作用があり、さらにSH2ドメイン,Proに富む配列やRas結合ドメインなどの多くの機能領域が存在した。RINのPro配列には,ダイナミンを細胞膜近辺に集積してクラスリン被覆小胞の陥入に関わるアンフィファイシシIIが,一方のRas結合領域には,種々のRasメンバーが結合した。すなわち,Rab5-RIN□アンフィファイシンII間の相互作用は小胞陥入から初期エンドソームへの輸送経路で機能し,RINファミリーが様々な細胞外シグナルを受容するプラットホーム(足場)の役割を果たす可能性を見出した。さらに申請者らは,新規低分子量G蛋白質を多数同定した。既に,Rasグループに属しながらGTP結合型のコンホメーションを好む生化学的性状のDi-Ras,RRP22,Rheb,さらに系統樹上全く別種の低分子量G蛋白質サブファミリーを形成すると考えられるGieなどについて解析を進め,いくつかが輸送担体の制御に介在するという予備的な知見を得ている。例えば,Rhebの一種は,細胞内において主にGTP結合型で存在し,ヒト脳のグリア細胞等に特異的な発現パターンを示すが,Rhebを動物細胞に過剰発現すると多層の膜構造をもつ巨大な小胞が形成される。Rhebは栄養状態を感知して細胞の成長や蛋白質合成を促進するmTOR経路の上流に位置すること見出されており,Rheb不活性化因子(GAP)であるTscは,精神遅滞やてんかんを誘発するヒト結節硬化症の原因遺伝子でもある。さらにTscの欠失した(Rhebが活性化状態にあると考えられる)グリア細胞では,興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の取込み低下が観察される。これらの知見は,Rhebがアミノ酸トランスポーターの内在化を制御して神経細胞の保護に寄与することを示唆している。
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