2006 Fiscal Year Annual Research Report
1分子計測・操作による細胞膜ラフト分子複合体の形成と機能の解明
Project/Area Number |
17081010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠見 明弘 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50169992)
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Keywords | IgE-Fc受容体 / 可塑的分子複合体 / ナノドメイン / 細胞膜 / 蛍光顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究では、1分子観察法を駆使し、ラフトの形成とシグナル伝達の機構を解明することを目的とする。最終的には、ラフトが何故シグナル伝達に有用であり、何故、合目的的に働くのかという、分子複合体に共通なシグナル機構について理解することを目的とする。本研究の作業仮説は、「リガンド結合によって、ラフト関連受容体は会合し、それが、会合部分へのコレステロールと糖脂質の濃縮とを誘起して、その部分に、会合体と同じ程度の大きさのやや安定なナノラフトが形成される。さらに、その受容体クラスターナノラフトに細胞内のラフト関連シグナル分子のリクルートが、タンパク質乾燥後作用だけではなく、脂質を含めたラフト相互作用によって生起する」というものである。 本年度は以下のような研究をおこない、新しい知見を得た。 リガンドを加えて誘導される受容体ナノラフトは、数秒おきに遅い単純拡散運動(特性時間1.27秒)と一時停留(特性時間0.57秒)の2つの時期を繰り返す。この時、運動が停止しているときに、PLCγと呼ばれる細胞内シグナル分子が、リクルートされることがわかった。これが、IP3の産生を誘起し、細胞内のカルシウム動員につながることもわかった。このとき重要なことは、IP3の細胞内の濃度上昇は10分程度続くにもかかわらず、PLCγのリクルートは、0.3秒程度と、1000分の1程度の時間に限られていたことである。すなわち、細胞内シグナルはアナログシグナルのように見えていても、それを形成する1回ずつのイベントは、非常に短くパルスのように生起すること、すなわち、細胞のシグナル生成の仕方は、FM様であることがわかった。
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