2009 Fiscal Year Annual Research Report
巨大分泌蛋白質リーリンによる、脳のレイヤー構造形成制御の分子機構
Project/Area Number |
17082007
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
服部 光治 Nagoya City University, 大学院・薬学研究科, 教授 (60272481)
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Keywords | 脳 / 発生 / 細胞移動 / リーリン / 変異マウス |
Research Abstract |
大脳皮質及び小脳にはそれぞれ特徴的なレイヤー(層)構造があり、脳の正常な機能発現に極めて重要な役割をもつ。リーリンはこのレイヤー構造形成に必須の分泌蛋白質である。我々は、リーリンのC末端領域(CTR)が、細胞膜上にあるリーリン受容体とリーリンの間の相互作用を安定化させることを既に見出した。そこで、CTRを特異的に欠損する遺伝子改変マウスを作製し、その生理的意義を検討した結果、CTRは、「強く局在したシグナル」を介して、レイヤー構造形成制御に関わることが示唆された。このとき、標的細胞は少なくとも2種類あることを見いだしまた、CTRに特異的に結合する分子をスクリーニングし、その候補分子を得た。現在、その妥当性の確認を進めている。 分泌されたリーリンによるシグナルのスイッチオフ機構については今までほとんど判っていなかった。我々は、リーリンを特異的に分解する酵素の同定を行い、ほぼこれに成功した。また、今まで知られていなかった新規分解部位をC末端領域内に見いだした。この分解を担うプロテアーゼの一群も同定し、さらに、この分解によってリーリンの拡散が制御されている可能性を見いだした。 最後に、リーリンがいつ・どの細胞に受容されるのかについて解析した。小脳では従来、移動中のプルキンエ細胞によって受容されると考えられてきたが、プルキンエ細胞は移動の極めて初期にリーリンを受容していることが示された。これは、大脳において脳室付近でリーリンが受容されることとも良く合致し、リーリンは大脳・小脳ともに、移動神経細胞の初期からその機能を発揮していることが示唆された。
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