2008 Fiscal Year Annual Research Report
中近世東アジア貨幣史の特殊性・共時性とその貨幣論的含意
Project/Area Number |
17083007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 明伸 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
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Keywords | 貨幣問の補完性 / 多元的貨幣 / 中国貨幣史 / 共時性 / 東アジア史 / 銀流通 / 通貨の匿名性 |
Research Abstract |
本研究は、貨幣の間の補完的な関係について、世界史的比較に基づく新しい理論を提示しようとしてきた。英国の代表的な貨幣・金融史専門誌にて、黒田が編者となって「多元的貨幣」の特集号を公刊し世界史的に貨幣の補完性現象を比較検討できたことは、この方法論の有効性が国際的に認知されたことを意味する。現に、当該号の黒田の巻頭論文ならびに昨年度同誌刊行論文は、海外の経済史研究者の論考において引用されつつある。 昨年度の東京での国際ワークショップのをもとに、アトランタでのAAS年次総会で中国貨幣史研究から貨幣理論を再考する部会を開催し、中国貨幣史の特殊性と貨幣論・経済史一般への重要性を明らかにした。その焦点である貨幣の重層性についてのアジア・アフリカにおける事例を比較する国際ワークショップを東京大学にて7力国8名の海外参加者を得て開催し、貨幣の多元的流通は市場の後進性などを示すのではなく、状況に応じた合理的対応であり、人類史に普遍的なものであったことを明らかにした。 本研究の柱の一つは、地域・国家を超えた貨幣現象の共時性をあきらかにすることである。沖縄にて出土銭貨研究会と合同で東アジア大の貨幣史を考える研究集会を開き、東アジア史の共時性を確認した。さらに13-14世紀におけるユーラシア規模の銀流通の共時性を明らかにする黒田の研究が世界各地で講演されている。『中国蔵黒水城漢文文献』の購入によりその基礎情報を得ることができた。 日独の近世領邦国家における信用・貨幣を比較する研究会を開き、近世・近代への移行の問題にも焦点をあてつつある。通貨の匿名性と信用の指名性の間の組み合わせの重要性が浮かび上がってきた。 本研究は国際的な成果の共有を目指している。イタリアでの欧州日本学研究集会では日本貨幣史の最新成果を報告し、朝鮮中世貨幣史の代表的論文を英訳し英国の学術誌にて公刊するなど、国際的発信を継続している。
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