2009 Fiscal Year Annual Research Report
希ガスをトレーサーとした太平洋における海洋循環の解明
Project/Area Number |
17101001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 有司 The University of Tokyo, 海洋研究所, 教授 (50162524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤尾 伸三 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (00242173)
高畑 直人 東京大学, 海洋研究所, 助教 (90345059)
田中 潔 東京大学, 海洋研究所, 助教 (20345060)
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Keywords | 海洋科学 / 地球化学 / 海洋物理・陸水学 / 地球観測 / 環境変動 |
Research Abstract |
東京大学海洋研究所運用の研究船白鳳丸および淡青丸を用いて海洋観測を継続した。平成20年7月に人工的にヘリウム-3を東北沖太平洋の深海に投入したが、その後の広がりを調べるために平成21年5月にも投入点周辺の海域で深層の海水試料を採取した。この海域はる流速観測など海洋物理学的な観測データが豊富にあり、投入後3回の航海で得られたヘリウムの海洋化学的なデータと比較することにより、深層循環モデルの検証に資する貴重なデータになると考えられる。また、太平洋と比較する上で重要なインド洋を縦断する航海に参加し、深層循環の時間変動の研究を視野に入れて海水試料の採取を行った。 上記の研究とは別にこれまでに得られたヘリウムの分析データから太平洋北西部におけるヘリウム同位体比の分布図を作成し、化学トレーサーから得られる深層循環像について考察し、海洋物理学的データから得られる循環像との比較を行ったところ調和的な結果が得られた。 深層循環に重要な鉛直拡散係数をCTDとLADCPのデータから推定する試みを行った。およそ2000m以深ではデータの精度のため、十分な推定値は求められなかったが、ハワイ海嶺などの大規模な地形付近で値は大きく、日本近海の海溝付近では大洋底部分に比べて顕著な差はないなどの結果が得られた。 シャツキー海膨南西測線で実施した係留観測と水塊分析により、ウェーク島水路を抜けた深層水がシャツキー海膨の南まで北上し、そこから西向きに流れて日本付近に達することが確認された。診断モデルもよい一致を示す。日本海溝の東を北上後の流速観測はないが、モデルでは千島列島付近で西岸を離れ、西に流れる。この緯度は天皇海山列のギャップに相当しており、その影響が示唆される。海溝やギャップなどは細かな地形の影響を評価するため、より高解像度のモデルが求められる。
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