Research Abstract |
星間分子雲にはアモルファス氷星間塵が存在し,アモルファス氷中には,ホルムアルデヒド(H_2CO),メタノール(CH_3OH)などが含まれている.これらの分子は,より大きな有機分子に進化しうる重要な先駆体である.私たちは,これらの分子が,低温(~10K)でのCO分子(固体)への水素原子逐次付加反応: CO→HCO→H_2CO→CH_3O→CH_3OH(1) で生成されたことを実験的に明らかにした.さらに,反応(1)の温度依存性,ならびに氷組成依存性(純粋なCO,H_2O-CO混合物)に関する実験を行った.その結果,アモルファスH_2O氷に触媒効果があることを見出した.そこで,本研究計画では,アモルファスH_2Oがある場合とない場合について,反応(1)の各ステップの反応速度定数を測定することにより,アモルファスH_2O氷の触媒効果を議論することが目的である. 平成21年度には,これまでに開発した実験装置を用いて,水素原子の表面への付着係数を測定することに成功した.具体的には,純粋なCOとアモルファスH_2O氷表面への水素原子の付着率の温度依存性を測定した.この結果およびこれまでに測定された実効的反応速度定数を用いて真の反応速度定数を求めることができた.さらに,水素原子のアモルファス氷表面での拡散係数の測定も可能になり,アモルファス氷表面には2種類のポテンシャルの異なる水素原子の吸着サイトがあり,反応への寄与の仕方が異なることを明らかにした.これらの結果,アモルファスH_2O氷の表面構造の特異性が水素原子の付着率をあげるとともに,反応を高温まで維持できる原因であることが分かった.これらの成果をもとに,長年の懸案であったアモルファス氷表面での水素分子の形成機構も実験的に明らかすることができた.
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