Research Abstract |
免疫系を持たない植物の細胞死のシステムは動物のシステムとは大きく異なると考えられる.しかし,その一方,プログラムされた細胞死は植物細胞と動物細胞の両方にとって基本的な生理プロセスであり,両者には共通した分子機構が働いているとする研究も多数ある.例えば,動物の細胞死の実行因子として知られるcaspaseの活性は,植物の細胞死の局面でも検出されている.しかしながら,国内外の多くの研究者の努力にも関わらず,caspase活性をもつ分子は長く同定されていなかった.今年度の解析から,シロイヌナズナVPE欠損変異体はcaspase活性を示さないことが分かり,昆虫細胞で発現させたVPEの酵素化学的な解析からも,VPEがcaspase活性を示す本体であることが決定づけられた。また,VPE変異体は,病原性毒素フモニシンB1による罹病的な細胞死を抑制することも併せて報告した(J.Biol.Chem,2005;Mol.Plant Microbe Interact.,2006;Apoptosis,2006). VPEは上記の病害による細胞死だけでなく,発生の過程における細胞死にも関与していることが次の様な研究によって分かった.シロイヌナズナのδVPEは胚発生の初期の珠皮の2つの細胞層に特異的に発現している.珠皮のこの2つの細胞層では,胚発生の過程でプログラム細胞死が起こることが分かった.δVPEを欠損したシロイヌナズナではこの細胞死が抑制されることを見出した(Plant Cell,2005;Curr.Opin.Plant Biol.,2005). 上記の結果から,植物は液胞プロセシング系によって支えられている独自の細胞死のシステムを持ち,発生に伴う細胞死および生体防御のための過敏感細胞死を制御している可能性が示された.
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