2005 Fiscal Year Annual Research Report
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17108002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 泰夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90114363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30193262)
新井 博之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (70291052)
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Keywords | 炭酸固定酵素 / フェレドキシン / RubisCO / 炭酸ガス濃度検出 / POR / 窒素同化 / 炭酸同化 |
Research Abstract |
本年度は、Hydrogenobacter thermophilusの炭酸固定酵素とHydrogenovibrio marinusの炭酸固定酵素発現に対する炭酸ガス濃度の影響を中心に奉告する。 Hydrogenobacter thermophilusのC2からC3への炭酸固定酵pyruvate-ferredoxin oxidoreductase(porEDABG)は、新規の5サブユニット型酵素であるが、大腸菌を用いた発現系によって、炭酸固定のためには全てのサブユニットが必要であることを、全てが精製された酵素システムを用いて証明した(BBRC,340,76-82,2006)。ただし、個々のサブユニットの機能については不明な点が多く残った。 一方、Hydrogenovibrio marinusの持つ3種の炭酸固定酵素の炭酸ガス濃度依存的発現については、3種のRubisCOの発現をそれぞれ調節する調節遺伝子、cbbR1、cbbR2およびCbbMの存在を明らかにした。各炭酸固定遺伝子はそれぞれの制御遺伝子の産物によって正に制御されており、制御蛋白は、それぞれ対応するRubisCo遺伝子の発現に関与していた(MiCrobiology,151,3615-3625、2005)。その結果、各遺伝子がどのような炭酸ガス濃度で有意の発現をするか、炭酸ガス濃度に対応した炭酸ガス固定量のプロファイルが明らかになった。ただし、微生物がどのように炭酸ガス濃度を検知し対応しているか、その詳細なメカニズムは不明である。恐らく炭酸ガス濃度の直接検知を行っているのではないと推察される。 この他、Hydrogenobacter thermophilusのエネルギー代謝に関しては、NAD還元型ヒドロゲナーゼの機能解析を進めると共に、ゲノムのドラフト解析から得られたferredoxin様蛋白の生理的意義(エネルギー代謝、炭酸固定への関与)の解明を開始した。 さらに本菌の進化系統学的位置、および本菌がTCAサイクル近傍で炭素代謝を行っていることから、本菌の窒素同化作用についてもその新規性が検証された。その結果、本菌の窒素同化反応は、その反応メカニズムおよび代謝制御機構の両面から極めてユニークな代謝系であることが示唆されている(亀谷、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻修士論文)。生物の窒素同化という生化学の基本代謝に関わる全く新規の知見であり、この点については、現在詳細な研究を遂行中である。 構造生物学的に興味が持たれた3HP回路の炭酸固定酵素、およびPORの大量精製と結晶化の実験は、本年度予定されていた優秀なポスドクが確保できず、また博士課程学生の不慮の退学もあって目立った進展は見られていない。
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Research Products
(3 results)