2009 Fiscal Year Annual Research Report
造血システムにおける腫瘍性幹細胞およびその悪性化に関与する遺伝子の同定
Project/Area Number |
17109010
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤司 浩一 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (80380385)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊島 崇徳 九州大学, 大学病院, 准教授 (40284096)
宮本 敏浩 九州大学, 大学院・医学研究, 講師 (70343324)
田中 真二 東京医科歯科大学, 医学部付属病院, 特任准教授 (30253420)
|
Keywords | 白血病性幹細胞 / 急性骨髄性白血病 / 慢性リンパ球性白血病 / MCL-1 / TIM3 |
Research Abstract |
急性骨髄性白血病(AML)と慢性リンパ性白血病(CLL)に注目し、白血病幹細胞の純化と白血化に関与する遺伝子の同定を試みている。AML幹細胞に特異的な抗原としてTIM3を同定し、抗TIM3抗体のAML治療の有用性を示した。 AML患者骨髄を免疫不全マウスに移植し、AML発症したマウスに抗TIM3抗体を投与すると、AMLは消失して正常幹細胞からの正常造血の回復が見られた。すなわち、TIM3は生体内においても白血病幹細胞に選択性が高く、正常幹細胞には影響しない理想的標的抗原であることが明らかとなった。また造血幹細胞の生存強化に重要な抗アポトーシス蛋白Mcl-1が、AML幹細胞でも高発現することを見出した。Mcl-1の発現制御はFLT3シグナルを介して調節されるが、FLT3のinternal tandem duplication(ITD)異常では、FLT3/ITDにより恒常的にFLT3シグナルが活性化されることがAMLの発症原因の一つである。FLT3/ITD変異AML幹細胞分画ではMcl-1は高発現しており、正常造血幹細胞にFLT3/ITDを遺伝子導入するとMcl-1の高発現が誘導されること、Mcl-1を強発現させたFLT3/ITD細胞株にFLT3阻害剤を添加してもアポトーシスを回避することを見出した。正常造血のFLT3シグナルは、PI3KとRas/ERK経路を介してMCL-1発現を制御されるが、FLT3/ITDは主としてSTAT5を介してMcl-1の発現を調節することを明らかとした。以上よりMcl-1およびSTAT5を標的とした白血病治療の可能性が示唆された。CLLの解析では、CLL患者のB前駆細胞や末梢CLL細胞をマウスへ移植してもCLL発症は認めないが、CLL造血幹細胞を移植するとCLL様病態を呈した。マウス内にはCLL細胞と同様のCD5陽性B細胞が増殖し、モノクローナルな再構成を示した。マウスに構築されたB細胞のVDJ再構成パターンは、患者CLL細胞とは異なるVDJ再構成パターンを示した。以上よりCLLの発症様式として既に造血幹細胞においてCLLに進展するのに必要な遺伝子変異が獲得されているが、単一の遺伝子異常ではCLL発症には不十分で、さらに遺伝子異常が蓄積されB細胞は増殖能力を獲得して、CLLへの進展が促進されることが想定された。
|
Research Products
(8 results)