Research Abstract |
1)青森県青森市三内丸山遺跡の縄文時代中期の腕輸及び漆器容器,八戸市是川遺跡の縄文時代晩期の漆器容器破片について塗膜の化学分析を行った結果,ウルシ由来であることが明らかとなった. 2)中国・韓国におけるウルシの分布調査を行い,次のことが判明した. ・湖北省の西部山岳地域の標高1000〜2000mの地域には広く野生のウルシがあること,同地域の標高500m以上の地点では樹液採取のため栽培されているウルシが普遍的にあること ・湖北省南東部の九宮山地域(標高1500m程度の山塊)にはウルシは野生,栽培とも無く,ウルシ属のヤマハゼ,ハゼノキ,ヤマウルシが自生していること ・浙江省杭州市周辺,天目山周辺地域では野生のウルシは全くなく,建徳市地域でわずかに栽培され樹液の採取が行われていること,杭州市付近一帯にはヤマハゼが広く野生しておりしばしばウルシと誤認されていること,天目座a院地域ではハゼノキ,ヤマウルシが自生していること ・了寧省本渓市地域にはウルシが野生しているが,樹液採取やその他の利用が全くなされていないこと,ウルシの栽培が全く認められないこと ・韓国では原州,沃川,智異山地域などでかつて栽培されたウルシが残存していること,現在でも栽培されているのは原州,智異山など限られた地域であること,野生のウルシがあるかどうかは判明しなかったこと 以上,中国,韓国におけるウルシの野生,栽培状況が一部明らかになったが日本のウルシのルーツを明らかにする上では未だ不十分である.また,同時にDNA試料も採取し,この解析を進めている. 3)青森県の天然ヒバ,秋田県の天然杉をはじめ現生樹木の年輪資料の収集に努め,また,青森県の天然ヒバについて年輪気候学的解析を行い,過去の冷害と年輪との関係を認め,夏の気温の部分的復元に成功した.これについては論文準備中である. 4)青森県埋蔵文化財センター,秋田県埋蔵文化財調査事業団等からヒバ,スギなどの遺跡出土を借用し,年輪測定を行った.
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