2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17201023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 康二 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (10107443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
目良 裕 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (40219960)
福谷 克之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10228900)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 赤外吸収 / 非線形光学 / ナノ分解能 / 近接場 / 光電場増強 / 金属探針 / カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
2つの異なる波長のレーザー光を走査トンネル顕微鏡(STM)の探針と試料間のギャップに照射すると局所的に差周波光が発生する。その発生原理と、赤外吸収スペクトル信号の起源、を解明することによって、分子(広義)の同定と特定部位の結合・電子状態を室温においてもナノスケールで解析できる新しい顕微分光手法=差周波励起ナノスペクトロスコピー=の適用可能範囲を明らかにすることを目的とし、今年度は次の実験を行った。 (1)フーリエ分光方式STM光吸収分光法の開発 波長逐次掃引方式の分光測定では、STM探針の時間的状態変化に伴う偽のスペクトルが得られることが多く、これを回避するため、フーリエ変換(FT)方式による分光測定を試みた。今回は、FT分光器の干渉計を通した白照射光を探針-試料間に照射し、多波長変調光に応答して生じるトンネル電流の時系列信号のフーリエ変換を求めることにより、Si試料の光吸収スペクトルを取得することに成功した。 (2)探針用単層カーボンナノチューブ(CNT)の光照射欠陥生成 差周波発生に有利となる探針先端での大きな光電場増強効果が期待されるCNTに強い光を照射すると欠陥生成や構造変化・イオン脱離が起こる可能性が危惧され始めたため、これを調べた。今回用いた照射光は軟X線領域の比較的光エネルギーを大きな3種の光(Mgターゲットからの1.25keV特性線、SP-8およびPFアンジュレータ放射光(240・310eV)、)で、欠陥生成は欠陥由来のラマン散乱信号の増大により、構造変化はX-ray吸収スペクトル変化、イオン脱離はTOFイオン質量分析によりそれぞれ調べた。その結果、わずかではあるが、光照射効果があることが見出された。今後もっと低エネルギーのレーザー光でも同様の構造変化が起こらないかどうかを調べ、CNT探針の光照射に対する安定性を調べる。
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