2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17201023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 康二 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (10107443)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 赤外吸収 / 非線形光学 / ナノ分解能 / 近接場 / 光電場増強 / 金属探針 / カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
2つの異なる波長のレーザー光を走査トンネル顕微鏡(STM)の探針と試料間のギャップに照射すると局所的に差周波(DFG)光が発生することを利用した新しい顕微分光手法=差周波励起ナノスペクトロスコピー(STM-DFG)法=の最適測定条件を明らかにすることを目的とし、今年度は次の実験を行った。 1 カーボンナノチューブ(CNT)探針とその構造変化:通常のW探針やPr-Ir探針では再現性よく所望の信号が得られないが、CNT探針を用いると、DFG光発生に有利な大きな光電場増強効果もしくは非線形光学応答を示唆する異常状態が時々現れることが分かったしかし、異常状感の一時的出現の原因がSTM探針の状態変化である可能性があるため、金属単層CNTに対するトンネル電流注入効果を調べたその結果、95Kの低温で3.5eV以上のエネルギーを持った電子を金属単層CNTにトンネル注入すると、約0.7eVのHOMO-LUMOギャップを伴う欠陥が発生することが分かった。この欠陥は室温で構造変化を起こすことから、探針不安定性の原因である可能性がある。しかしこのことから、電流とバイアス電圧を小さくすれば、これを原因とする探針不安定性を回避できると考えられる。 2 フーリエ分光方式多重差周波光吸収法の試み:これまでの研究から、探針の状態変化による信号のゆらぎが大きい場合は、分光スペクトルを再現性よく測定するには、波長掃引を必要としないフーリエ変換(FT)分光方式の適用が現実的には必須であることが分かったFT方式によるSTM-DFG測定を模擬するため、波長幅を有する超短パルスレーザー光と固定波長レーザー光を重ねてFT干渉計に通すことにより生成した多波長同時変調光を、金微粒子により光電場増強効果と非線形光学応答を実現した模擬試料に照射することにより、多重DFG光吸収分光測定が可能であることの実証を試みた。
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