Research Abstract |
1.マイクロシステムによる生体分子の分離,回収 細胞内の生命活動を担う生体分子は,単一分子で機能を発揮するとは限らず,オルガネラなどの超分子複合体を構成して初めて機能を発揮する場合もある。このため,生体分子やオルガネラを物理的に高純度に単離,精製する技術の開発が必要とされている。本研究では,微小流路をチップ上に作製し,蛍光標識した生体試料を蛍光顕微鏡にて高感度に検出し,温度感受性ハイドロゲルをレーザー局所加熱にて制御し,生体試料溶液を高精度に流し分ける技術の開発を行った。今年度は,高速で高感度な分離を行うため,試料溶液を搬送流で挟み込んでシース流とした。その結果,試料が通過する範囲が幅2μm,深さ4μm以内になり,高開口数の対物レンズを用いて1個の量子ドットに結合した生体分子を検出し,3msの時間分解能で分離することに成功した。 2.ナノ開口によるタンパク質問相互作用のイメージング ナノ開口を用いてエバネッセント場を発生させ,1分子蛍光イメージングを行った。まず,石英ガラス基板に金属薄膜を約100nm蒸着し,これに100nmの開口を開ける。ここにレーザー光を照射すると開口の付近にエバネッセント場が発生する。このエバネッセント場は全反射によって発生する場合よりも励起領域が狭いため,蛍光標識した生体物質が溶液中に数μM存在しても1分子蛍光イメージングが可能である。蛍光色素から発した蛍光が効率よく検出装置に届くように,ナノ開口のガラスに深さ40nmのエッチングを施した。ナノ開口に蛍光標識したシャペロニンGroELを固定し,溶液中に別の蛍光色素で標識したGroESを加え,両者が結合と解離を繰り返す様子をイメージングすることに成功した。
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