2008 Fiscal Year Annual Research Report
外国人集住地域における地域社会構造と地域住民生活の変容に関する総合的研究
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17203032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小内 透 Hokkaido University, 大学院・教育学研究院, 教授 (80177253)
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Keywords | ブラジル人 / ブラジル人学校 / エスニック・コミュニティ / 派遣労働者 / 労働組合 |
Research Abstract |
1. 4カ年計画の最終年度に当たる本年度は、静岡県浜松市のブラジル人学校に通う子どもたちと彼らの親を対象にしたアンケート調査を実施した。その結果、帰国を前提にした将来展望をもつ親の判断でブラジル人学校へ子どもたちを通わせるケースがほとんどであること、にもかかわらず、親たちは学校に対してポルトガル語による教育だけでなく、日本語の教育や日本社会と触れ合うことも望んでいることがわかった。 2. 2008年秋以降の世界的不況により、派遣労働者の多くが職を失うようになった。最初に影響を受けたのは、日系ブラジル人を始めとする外国人労働者であった。われわれは、世界的不況により悪化した雇用情勢のもとで、日系ブラジル人がいかなる事態に直面しているのかについて、静岡県浜松市および愛知県豊橋市の実情を調査した。 3. その結果、少なからぬ日系ブラジル人が帰国していることがわかった。だが、同時に、職を失ったり、収入が減少したりしながらも、日本に残っている日系ブラジル人も数多くいた。彼らの中には、日本の労働組合に加入し展望を切り開こうとする者がいる反面、お金がかかるため自らの子どもたちがブラジル人学校に通うのをやめさせる者もいた。 4. いずれにしても、このような状況の下で、日系ブラジル人をめぐる環境は、きわめて劣悪なものになっている。これに対して、ホスト社会やエスニック・コミュニティから様々な援助が始まっている。行政によるブラジル人学校への財政支援、NPOなどのボランティア団体による子どもの学習支援、エスニック・ビジネス経営者層による就労支援などの取り組みが始まっている。 5. これらの動きが、ホスト住民と外国人の共生を育むように機能するのか、またかつて「解体コミュニティ」と評された日系ブラジル人のコミュニティの凝集性を高めるのか、が大きな論点として浮上するようになっている。
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Research Products
(6 results)