Research Abstract |
今年度は,本研究課題の2年目として活発な研究が行われ,以下のような優れた研究成果が挙げられている. 大仁田は,8月のLMS Durhamシンポジウム"Methods of Integrable Systems in Geometry"に組織委員の一人として参加し,そこで北京・清華大学のHui Ma副教授との複素2次超曲面内のラグランジュ部分多様体に関する共同研究を行うことができた.その共同研究では,複素2次超曲面内のラグランジュ部分多様体を球面内の超曲面幾何学の立場から論じ,特に等径超曲面のガウス像として得られる複素2次超曲面内の極小ラグランジュ部分多様体に注目した.複素2次超曲面内の等質ラグランジュ部分多様体の分類を与え,主曲率が3個以下の等径超曲面にガウス像として得られるコンパクト極小ラグランジュ部分多様体のハミルトン安定性を完全に決定するという,新しい結果を得られた.これらの研究成果は,Durham,阪市大数学研究所,東北大,清華大(北京),復旦大(上海),昆明での日中幾何学研究集会,日本数学会一般講演などで発表した.Hui Ma副教授との共同研究はさらに継続している. 調和写像へのゲージ理論的アプローチに関して,長友は,グラスマン多様体への調和写像に対して高橋の定理,de Carmo-Wallachの定理の一般化の相当するものを証明し,さらにゲージ理論的様相を解明した.これは,調和写像とYang-Mills接続とを真に関連付ける結果である. 無限次元部分多様体の研究に関しては,小池は,非コンパクト型対称空間内の複素等焦部分多様体(これは同空間内の平坦なセクションをもつ等径部分多様体の概念と一致することが予想される)でプロパーなものに対してChevalley型制限定理を得ることに成功した。その証明は、その部分多様体を複素化し、さらに、それを無限次元アンチケーラー空間へリフトしたものを調べることによりなされた.また,田丸は,非コンパクト対称空間の等質超曲面の分類問題に関して,階数1の場合の分類など研究を進展させている。 本研究課題の重用項目である可積分系による曲面・部分多様体や調和写像の研究は,大仁田は安藤,宇田川,谷口,守屋と研究協力者の乙藤(日大工)ら可積分系によるWillmore予想の研究について検討を行った.特に,M.Schmidtの複素Fermi曲線の無限次元モジュライ空間を使う理論について検討し,7月の数理研での研究集会で解説・紹介を行い,数理研講究録において解説の論説を書いた.まだまだ不明瞭な部分も多いが,幾何学的変分問題を可積分系でアプローチする大変興味深く示唆に富んだ理論であり,今後もさらなる解明を目指して研究を続ける。 大仁田は,東北大・小谷元子教授らと協力して6月阪市大で情報幾何ミニスクールを実施し,情報幾何の方法や無限次元統計多様体の理論は本研究課題に非常に有益であった.
|