2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17204041
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 健治 Nagoya University, 地球水循環研究センター, 教授 (20262917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 博 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (80184935)
檜山 哲哉 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 准教授 (30283451)
阿部 理 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00293720)
篠田 太郎 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (50335022)
樋口 篤志 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 准教授 (90324384)
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Keywords | メソスケール降水システム / 降水の安定同位体組成 / 降水形態 / 大気水蒸気量 / 雨滴粒径 |
Research Abstract |
偏波レーダとラジオゾンデを用いたメソスケール降水システムの観測を梅雨期の沖縄本島で実施し、同時に降水を採取して安定同位体組成を分析した。降水の安定同位体組成を、イベント間やイベント内の短時間変動に着目して解析し、降水形態(対流性降水・層状性降水)や大気水蒸気量との関わりについて考察した。その結果、水蒸気の起源が同一であっても、降水の酸素同位体組成はイベント間で大きく異なった。同位体組成には降水形態が大きく関わるとともに、対流性降水にあっては、対流発生前の対流圏中層の乾燥度が大きく影響した。同位体組成のイベント内の短時間変動からは、対流システムの発達段階ごとに酸素同位体組成が変化していることがわかった。対流システムの発達期には同位体組成が徐々に低くなったが、対流システムの衰退期には高くなり、大気下層での蒸発の影響が無視できないことがわかった。以上により、降水の安定同位体組成の季節内変動を論じる際には、水蒸気の起源だけではなく、降水形態と大気水蒸気量の鉛直分布を考慮する必要があることが明らかになった。 前年度開発した粒径別の雨滴採取法を用いて5月、9月、12月の三回の降水イベントで雨滴試料の採取および水素・酸素同位体組成分析を行った。その結果、三回のいずれのイベントにおいても半径0.8mm以下とそれ以上の雨滴について水素・酸素同位体組成に有意な差、すなわち小粒径雨滴がより高い同位体組成を有すという結果が得られた。落下中の雨滴に関する鉛直一次元モデル計算により、粒径により異なる同位体組成を有す原因として、落下中の雨滴蒸発に伴う同位体効果であることを定量的に評価した。これまで室内実験などにより、雨滴の落下中の蒸発に伴う同位体比の変化の可能性は示唆されてきたが、観測的研究によって実証したのは初めてである。本研究により、降水同位体組成を水循環解析や古環境復元の指標として用いる場合、落下中の蒸発による雲水からの変質に関して考慮する必要があることを示した。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 雨滴の粒径別同位体比分析2007
Author(s)
江口景子・阿部理・檜山哲哉
Organizer
2007年度日本質量分析学会同位体比部会
Place of Presentation
札幌
Year and Date
2007-10-24
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より
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