Research Abstract |
本研究は,北西太平洋海域コア・陸上セクションを中心として,新第三紀・第四紀の浮遊性有孔虫,放散虫,石灰質ナンノ化石,珪藻の示準化石について,地理的生息範囲と生態的特徴を考慮に入れた微化石層序データを提供できる基礎を作ることを目的としている. 平成17年度は,分類基準の明確化にかかる調査と標本画像データベース構築の準備をおこなった.東北大学で5月,8月に会議を開催し,4微化石群の専門家で意見交換を行い,それぞれの分類群が抱える問題点について,共通認識を得た.8月初旬に微化石サマースクールを東北大で開催し,専門家以外が抱える問題点の把握をおこなった. 画像蓄積は,3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡と実体顕微鏡を新規に購入し,浮遊性有孔虫と放散虫について1000枚程度の画像を蓄積した.石灰質ナンノ化石については,新第三系・第四系の化石層序レビュー,示準化石の評価およびカタログ作りをおこなった.珪藻について文献データから,年代層序の整理を行い,珪藻化石が基準面に用いられているのが31属の142タクサであることを明らかにした. 4微化石群が連続して共産し,層位関係を統合して研究できる候補を8月に東北大学で開催した会議で候補を絞り込んだ.候補の一つである一関の第三系を9月下旬-10月初旬に調査した.もう一つの候補は,高知県南東部に分布する登層であり,陸上科学掘削をおこなうプランを決定するために12月に高知大学で研究集会を開催し,この基盤研究(A)の目的達成に相応しいことを確認した.この掘削は12月と1月に行い,約60mのコアを採集した.また,これまで浮遊性有孔虫化石層序が組まれている地点の堆積年代を決めるため,K-Ar法による年代決定をおこなった. これらの成果ならびに研究と平行して,今年度の浮遊性有孔虫,放散虫,石灰質ナンノ化石,珪藻について,各基準面の地域差をまとめる作業を開始した.この過程で,今年度の目的である分類基準の明確化には,高コントラストな3D画像を得る必要性が生じ,この目的をより推進するのに効果的なSteREO Discoveryを新規購入し,浮遊性有孔虫化石の撮影を開始した. これら成果をまとめると,今年度の研究実施計画で予定していた,層位関係を統合して研究できるセクションを選定・掘削を終え,化石層序の具体的問題点の洗い出しがおこなわれ,示準化石の画像蓄積,年代層序の情報の整理,分類学的問題点の洗い出し,数値年代の追加が,予定通りにおこなうことが出来た.今年度の成果に関係する計18件の研究発表が印刷された.
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