Research Abstract |
本年度も引き続き,肥後変成帯,黒瀬川帯および関連する九州の変成岩類についての研究を行った。今年度は以下の成果があった。 (1)肥後変成帯から中圧型グラニュライトの発見(牧賢志との共同研究:JMGに投稿中) 肥後変成帯の泥質片麻岩と互層する塩基性岩石に斜方輝石を含まない中圧型グラニュライトが存在することを明らかにした。この岩石は,ザクロ石,単斜輝石,角閃石,斜長石,石英を主要構成鉱物とし,その共生関係は3つのステージに区分できる。M1:ザクロ石斑状変晶と粗粒単斜輝石が安定なステージ,M2:ザクロ石が単斜輝石+斜長石に分解するステージ,M3:角閃石+斜長石が安定なステージ。M1,M2に共通な組み合わせであるザクロ石+単斜輝石+斜長石+石英から温度圧力条件を見積もると,M1ステージが8.1kbar,740℃,M2ステこージが0.5-8.9kbar,730-840℃である。この見積もりから累進的な等圧過熱経路とそれに引き続く急激な減圧経路とが推定された。このような高温高圧条件を示す岩石の発見は,蛇紋岩中の構造岩塊を除けば,肥後変成帯からは最初であり,肥後変成帯の温度圧力履歴を考える土で重要な知見である。 (2)黒瀬川帯のザクロ石単斜輝石グラニュライトの研究(高田里美との共同研究:投稿準備中) 九州中央部,熊本県五木村に分布する黒瀬川帯中のザクロ石単斜輝石グラニュライトの形成条件を検討した。典型的なグラニュライトの鉱物組み合わせは,ザクロ石+単斜輝石+斜長石+石英であり,種々の割合で角閃石を含む。多くの場合,強い圧砕作用とそれに件う後退変成作用を受けている。ザクロ石の周囲にはケリファイト縁(反応縁)が発達するのが普通であり,その鉱物組み合わせから,特定の共生関係が平衡にあったと推定される3つのステージが認識された。ザクロ石+単斜輝石+石英が安定なステージIは,10kbar,820℃の温度圧力条件であったと見積もられ,ザクロ石+角閃石+斜長石+石英が安定なステージIIは,6-7kbar,720-790℃の温度圧力条件であったことが明らかになった。ステージIIIでは,角閃石や斜長石が細粒の緑泥石,ブドウ石,緑レン石,アルバイトなどに置換される。 この他,印刷になった論文が2編,印刷中の論文が3編(Lithosに2編,American Mineralogistに1編)ある。
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