Research Abstract |
本年度は作年度に引き続き以下の1,2のテーマを行った。 1.地球外惑星物質表面で生じる宇宙線照射の履歴を定量的に評価するために,隕石試料のSmおよびGd同位体比測定を行い,149Smおよび157Gdの中性子捕獲反応に基づく150Sm/149Sm,158Gd/157Gd同位体変動の解析を継続して行った。(1)ガスを多量に含む隕石であるKapoeta隕石について酸による溶出成分抽出、組織中に含まれている代表的な岩片成分の分離を行い,同位体分析を行ったところ,各々の成分について中性子捕獲効果が顕著に異なることがわかった。(2)ブレッチア組織を持つオーブライトであるNorton County, Cumberland Fallsについて各々の組織に含まれる岩片を顕微鏡下で抽出し,Sm, Gd同位体測定を行った。特にNorton Countyに含まれる岩片からは従来の10倍以上の被中性子フルエンス(〜10^<17>n/cm^2オーダー)が見積もられた。以上の結果は,これらの隕石の母天体が形成される際に天体周囲に浮遊していたリゴリスが集積される過程で長期にわたって照射された太陽宇宙線の影響を反映していると考察される。この結果を踏まえ,次年度は主としてブレッチア組織を持つ各種隕石を研究対象とし,Sm, Gd同位体分析を展開する予定である。 2.惑星の初期分化過程を年代学的に議論するために135Cs-135Ba壊変系を用いた新しい年代測定法に着手した。20億年前に大規模な核分裂連鎖反応を起こし,大量の135Csが生成されたことで知られる天然原子炉試料関連試料について,そのBa同位体比分析の解析結果から135Csの惑星表層における化学的挙動を解明することを試みた。その結果,135Csは10-1000年の短時間でBaと化学分別を起こし,粘土鉱物に吸着される傾向があることがわかった。この結果を踏まえ,炭素質コンドライト隕石中に見いだされる水質変成を受けたフェーズのBa同位体分析から太陽系初期に存在した135Csを定量的に見積もることを検討している。
|