2005 Fiscal Year Annual Research Report
円偏光受光・発光スピントロニクス半導体素子の基礎研究
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17206002
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗片 比呂夫 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (60270922)
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Keywords | 円偏光 / スピン / フォトダイオード / LED / ヘテロ構造 / スピン依存伝導 |
Research Abstract |
(1)円偏光検出素子の研究 円偏光を電気信号に直接変換できるSpin-photodiode(Spin-PD)の研究を着実に進め、円偏光照射依存電流(ΔI=I_<σ+>-I_<σ->)の大きなn-Al_<0.12>Ga_<0.88>As/p-In_<0.15>Ga_<0.85>Asヘテロ構造の作製し成功し、逆バイアス電圧でのΔIの印加磁場依存性は構成素材の磁気円二色性の効果が主だが、順バイアス(V=1.6V以上)でのΔIはスピン拡散伝導に基づくspin-voltaic effect(SVE)が支配的となることを実証した。この成果は、理論的に指摘されていたスピン起電力の発生を世界に先駆けて確立するものである。さらに、III-V族ヘテロ構造によるスピンフォトダイオードに道を開くものと信ずる。η層(d=1μm,ND=5×1017cm^<-3>)のAl組成は伝導帯有効g因子がg〜0となるように12%、p層(d=200nm,NA=8×10^<18>cm^<-3>)はIn組成を15%(g〜-1.2)とした。逆バイアス電圧では磁気円二色性による効果のみであるが、充分に大きな順バイアスV=1.5VではH=±1.5T以上でSVEによる寄与が顕著に現れた。さらにV=1.6VではSVEが支配的となり、H=3TではMCDによるものに比べ3倍以上となった。独自に開発したモデル計算で実験値を解析し、ヘテロ界面でのスピン偏極率P_n=0.7%を得た。今後、この値を大きくする研究に取り組む。 (2)円偏光発光素子の研究 偏光切替え可能な発光素子実現に向けた最初のステップとして、強磁性半導体Ga_<0.98>Mn_<0.02>As層とGaAs量子井戸(井戸幅4nm)が量子力学的に結合した試料を作製し、その発光特性を調べた。発光の円偏光度の磁場依存性には(Ga,Mn)Asの磁化に対応したヒステリシスが現れた。(Ga,Mn)As層を透過した発光は、この層の円二色性(MCD)による効果が支配的であったが、(Ga,Mn)AsとGaAs量子井戸の結合状態からの発光と考えられる信号成分も含まれており、結合状態を利用した円偏光素子の実現への可能性を示唆する結果を得ることができた。今後、更なる発光強度の増大をめざす。
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