Research Abstract |
近年通信ネットワークの普及と発展に伴って,光ファイバや電話線を用いた有線通信だけでなく,移動無線通信においても高速通信システムの構築が望まれているが,無線通信の高速化には限界がある.この限界を克服し,さらに高速化を図るために,アンテナの指向性を適応的に変化して干渉波を抑圧するアダプティブアレーアンテナの携帯端末への応用が期待されている.本研究では,端末筐体の影響を考慮してアレーアンテナ素子間の相互結合などの特性解析を行い,相互結合の補償法を開発すると共に,携帯端末搭載アダプティブアレーアンテナの限界を明らかにすること目的としている.平成17年度は,まずモーメント法並びに時間領域差分法(FDTD法)を用いて携帯移動端末搭載用アレーアンテナの数値解析と設計を行い,アダプティブアレーとして動作させた場合に問題となる素子間相互結合の影響を明らかにした.また,相互結合の影響を予め求めておき,これを考慮したアダプティブアレーの制御法を提案した.さらに,携帯機端末に搭載したアレーアンテナを用いて到来波方向推定を行い,アレー素子の形状がかなり異なっている場合でも本手法が有効であることを明らかにした.次に,試作したW-CDMAアダプティブアレーアンテナ受信装置を用いて,実験的に干渉波抑制効果を検討した.最後に,アダプティブアレーアンテナの動作を精度良く測定するために,受信アンテナ,光ファイバ及び光変調器からなる光電界センサを導入し,その感度やダイナミックレンジ等の基礎的な特性を測定した.その結果,金属のケーブルを用いた受信アンテナに比べて受信SN比は20dB低下するものの,周囲の電磁界を乱すことなく精度良く電磁界を測定できることが明らかになり,アダプティブアレーの評価に十分な性能を有することを確認した.
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