Research Abstract |
アモルファスシリカナノ微粒子やシリカゲルなど,表面水酸基を多数有するシリカ材料を数100℃程度で熱処理すると,バルクシリカガラスには見られない青色発光(発光波長420-450nm)が普遍的に観察されることを見出した。これらの発光はいずれも,350nm付近に発光励起ピークを持ち,かつ,数十ナノ秒オーダーの非指数関数的発光減衰挙動を示すことが分かった。本研究では,これらアモルファスシリカの青色発光に関するより詳細な知見を得るため,様々な形状,微細構造を有するシリカ材料の発光強度および発光減衰過程を観測した。具体的には,気相合成されたアモルファスシリカナノ微粒子(fumed silica),液相法で合成したsilica gelなど,様々な形状,微細構造,比表面積を有するシリカにつき,モードロックチタンサファイアレーザーの2倍波(波長350nm,パルス幅180fs)を励起源としてその発光強度および発光減衰過程を観察した。さらに,それら試料の形状を,電界発光型走査型電子顕微鏡観察,および窒素吸着実験により詳細に調べた.実験の結果,緻密な構造を有するsilica gelは,比表面積の大きいfumed silicaにくらべ発光寿命が短く,より指数関数的に減衰することがわかった。この結果より,非指数関数的減衰をつかさどる遅い減衰過程がシリカ微粒子表面のトラップ準位の存在に起因していることが明らかとなった.さらに,最大の発光強度は,真空中および窒素中よりも,大気雰囲気で加熱した際に得られることが明らかとなった.以上の,実験結果および量子化学計算にもとづく理論的考察より,シリカ微粒子からの発光機構の微視的モデルを構築した.
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