Research Abstract |
本年度は,これまで得たシリカ微粒子表面の発光中心に関する知見をもとに,さらに高い発光効率を有する材料を創製すべく,シリカベースの有機一無機複合体の合成と発光挙動の解析を行った。具体的には,オクタデシル基を置換基に有する様々なポリシロキサンを,対応する金属アルコキシド及び塩化物の加水分解反応および脱水縮合重合反応により合成した。その結果,ケイ素に3つの水酸基と1つのオクタデシル基が結合したポリシロキサンのみが加熱処理により内部量子効率約18%という高い発光効率を示すことを見出した。実験の結果,高い発光を示すポリシロキサンの加熱過程における構造変化,ならびに発光中心の形成機構に関し以下の知見を得た。合成直後のポリシロキサンはアルキル基同士の相関により層状結晶構造を形成し,アルキル基が-(CH_2)_<16>-程度のall-trans配置で規則正しく配列している。この事実は,X線回折測定,ならびに赤外分光測定の結果明らかとなった。ただし,この状態では,発光はほとんど観測されない。試料を,300℃程度まで加熱すると,融解により層状結晶構造は消失し始める。ただし,アルキル基はまだ熱分解しておらず,アルキル基間の相関は存在する。この加熱温度でも発光はほとんど観測されないが,加熱温度をさらに400℃程度に上昇させると,450nm付近に複数のピークを有する可視発光が観測され始めた。積分球を用いた発光の量子効率を測定した結果,内部量子効率で18%程度と,これまで,有機-無機複合体で報告されている最高値に匹敵する高い値が得られた。また,アミノ基やカルボキシル基など,特定の官能基を含まない有機-無機複合体でこのような高い発光量子効率が報告されたのは,本研究が初めてである。また,本研究では,ケイ素に結合した3つの水酸基(シラノール基)の1つまたは2つをメチル基に置換した試料では,オクタデシル基を含んでいるにも関わらず,発光は非常に弱いか,または,殆ど観測されないことを見出した。この実験結果より,化合物内の複数のシラノール基の関与する脱水縮合反応によって発光中心が構造中に誘起されたことが明らかとなった。
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