Research Abstract |
本研究は,植物の葉の形態形成の際に,細胞伸長と細胞伸長とがどのように調和,統合されることで,一つのまとまりのある器官を形作るのかを,解明することを目的としている。本年度は,転写因子の一種をコードするSPL15のmiRNA耐性変異は,ヘテロブラスティーの制御系を通じ,細胞増殖の促進と細胞伸長の抑制に関与するコをと示し,SPL15遺伝子が,葉の発生プログラムの統御上,重要な役割を持つことを明らかにした。 一方,葉の細胞数が減少し,細胞サイズが大型化する,補償作用を示す変異株からは,FUGU5遺伝子の同定にも成功した。これまでに単離したfugu5の3つのアレルは液胞局在型H+-pyrophosphataseをコードするAVP1に変異を持ち,これらはいずれも弱いアレルであった。avp1の強いアレルではオーキシンの細胞内への透過性が低下することが知られており,細胞内のオーキシン濃度の低下が補償作用を引き起こす一つの要因である可能性が示唆された。 上記の変異株とは対照的に,細胞数のみが大きく増加するgra-D変異株を用い,マイクロアレイ解析を行ったところ,4番染色体下部の遺伝子の発現レベルが軒並み約2倍に増加していることが判明した。遺伝学的なデータからこの領域が重複していることが示唆されていたが,この結果はそれを強く支持するものである。この結果を踏まえた分子遺伝学的解析から,ANTやCYCD3;1といった遺伝子が,gra-Dにおける細胞増殖の促進に,少なくとも部分的に寄与していることが明らかになった。 最後に,補償作用と密接な関わりを持つ,リボソームタンパクRPL5Bの欠損変異であるoli7は,as2背景で葉の向軸側が欠損する表現型を示すことを見いだした。oli7とは別のリボソームサブユニット変異株rp14dを見いだし,この変異株もまた,as2の表現型を劇的に促進することを明らかにした。この結果は,リボソーム機能が補償作用にも背腹性の制御にも重要な役割を果たすことを示し,翻訳を通じた遺伝子発現制御について,再考を促す重要な知見である。
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