Research Abstract |
ヒトの指などの局所部位では極度に冷却がされた場合,血管収縮の約5-10分後にCold-induced vasodilation (CIVD)という血管の拡張反応が起こる.CIVDは神経支配されたAVAが関与している事,高温下では開始が早まり,皮膚温の最小,最大値が増加する事などが報告されているが,詳細なメカニズムについては不明な点が多い.血流量は内皮細胞,神経,平滑筋細胞,呼吸,心拍の影響を受け変動しており,それぞれの影響が血流量の特定の周波数帯に現れる.本研究はCIVD時の血流量を周波数解析し,調節機構に関連した周波数帯のエネルギー密度の変化を調査することで,血流調節機構のCIVDへの影響を調査した.エネルギー密度は血流量と共に増減するので,全周波数帯のエネルギー密度で除した相対エネルギーを求めることで,血流量の揺らぎの影響を取り除いた.その結果,冷水曝露後に心拍が関連した周波数帯の相対エネルギー密度が増加し,それに伴い,神経,平滑筋,呼吸に関連した周波数帯において減少がみられた.しかし,内皮細胞に関連した周波数帯では冷水曝露後に著しい増加反応がみられ,その後減少するという結果が得られた.このことからCIVD反応に内皮細胞の活性が関与していることが考えられた.また,ミクロ的なアプローチにおいて,低温下で流れによるせん断応力を内皮細胞に負荷した.その結果,せん断応力を負荷した場合,一酸化窒素合成酵素のリン酸化が変化することが分かった.マクロ,ミクロ的なアプローチから,CIVD反応には内皮細胞が強く関連していると考えられた.
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