Research Abstract |
本研究は水産動物で唯一ゲノムが解読されているトラフグを用いて,耐病性関連マーカーの探索や免疫関連因子の機能解析を行なうことで,育種の基礎を確立することをめざしている. 1.連鎖地図の高密度化 昨年度完成させ,論文およびネット上で公表した連鎖地図は,マーカー数200のものであったが,詳細な解析を進める前提として,マーカー数を400にまで増大させた.各マーカーはゲノム断片配列を代表しているため,これにより,全ゲノム配列の約60%について,染色体の位置情報を与えるまでに高密度化させることができた. 2.耐病性関連マーカーの探索 昨年度ヘテロボツリウムに対する攻撃試験を行なった,クサフグとトラフグの雑種第1代の雄とトラフグ雌との交配により得た戻し交配世代(BC)のサンプルについて,寄生虫数,寄生虫サイズとの関係について連鎖解析を進めた.22連鎖群の内,8連鎖群を解析した結果,寄生虫数に連鎖する領域,2ヶ所,寄生虫サイズと関連する領域1ヶ所が見出され,そもそもの付着数とその後の成長とは別々の遺伝子に連鎖していることが明らかとなった.当該領域にはいくつかの免疫関連遺伝子が見出され,今後,候補遺伝子の絞込みを計画している. 3.ゲノム情報を利用した免疫関連因子の探索と機能解析 耐病性に関わる免疫関連因子の探索と,機能解析を進めた.自然免疫系に関わる体表粘液のパフレクチンについて,このレクチンで凝集される菌は体表に付着しにくいことを見出した.粘液中に免疫グロブリンを運搬する分子としてpIgRの構造を魚類で初めて解明し,哺乳類と異なり,消化管など内側の表面だけでなく体表でも発現していること,その分子が確かに免疫グロブリンと結合していることを明らかにした.抗体産生細胞の成熟に関わるB-limp1,BCL-6,XBP-1,Pax-5,AID,TLE-3などについて,その構造解析を進めた.
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