Research Abstract |
バイカルアザラシ14組織のCAR mRNA発現量を測定したところ,CARは肝臓で最も高発現しており,肝臓がCARの主要な標的組織であると推察された。また肝臓中CAR mRNA発現量とCYPタンパク質発現量およびPOPs蓄積濃度との関係を解析したところ,いずれも有意な相関関係は認められなかった。このような結果から,CAR発現量はPOPs暴露量による影響を受けないこと,さらにCYPなど標的遺伝子の発現量を決定しないことが示唆された。 さらにin vitro CARレポーター遺伝子アッセイ系を構築し,バイカルアザラシとマウスCARのリガンドプロファイルを比較した。その結果,バイカルアザラシCARは哺乳類CAR共通のアンタゴニストとして知られている男性ホルモン代謝物のandrostanolやandrostenol,マウスCARアゴニストであるestroneやestradiolに応答しないことが明らかになった。また,バイカルアザラシCARはヒトCARアゴニストであるCITCOにより濃度依存的に活性化されたが,マウスCARアゴニストであるTCPOBOPには応答しなかった。さらにバイカルアザラシCARは環境汚染物質である各PCB同族・異性体(PCB99,101,105,118,138,153,156,180,187)やDDT化合物(p,p'-DDT, p,p'-DDE),trans-nonachlorによって活性化された。また,バイカルアザラシで得られた結果をマウスCARの結果と比較したところ,オルソ位に塩素が2個以上置換したPCB異性体で処理することにより,バイカルアザラシCARはマウスCARよりも敏感に応答する傾向が伺え,バイカルアザラシはPCB暴露に対してマウスより高感受性であると考えられた。
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