Research Abstract |
Fcレセプター(FcR)は免疫系細胞を正と負の両方向に制御する分子群であり,その制御様式や免疫疾患との関連を理解することは重要である.本研究で代表者は,我々自身の成果も含めて,FcRによる免疫制御機構に関するこれまでの多くの基礎的研究成果に基づき,申請した研究期間内にFcRの応用的展開を目指した.具体的には自己免疫疾患における抑制性FcγRの役割の解明,FcRをターゲットにした免疫疾患の治療モデルの構築,さらにはモデル動物由来の不死化培養細胞の新規な作製方法の開発に基づいてin vitro薬効評価系の開発を行った.これらの成果に基づき,先進医療技術の開発に発展させることを将来の目的とした.多量のγグロブリンを静注する,intravenous immunoglobulin療法,いわゆるIVIGは1960年代からγグロブリンの補充を目的に免疫不全症に適応されていた.現在は多くの自己免疫疾患で有効性が確認され,利用されているが,その治療効果のしくみは良く分かっていない.興味深いことにIVIGの効果はFcγRIIBの発現に依存するという報告も見られ,FcRを介する効果があることは疑いない.我々がこれまで作製してきたアレルギー,自己免疫疾患モデルにおいてIVIGの効果を網羅的に検証し,IVIGの有効性についてこれまで知られていなかった有効性を期待するとともに,FcγRIIBに依存した効果の有無とその機構を調査した.具体的にはI型糖尿病モデルにおいてFcgRの役割とIVIGの効果について検証した.その結果,I型糖尿病は活性化型FcgRに依存した発症を示すこと,FcgRIIBには依存しないこと,IVIGが発症の遅延と軽症化に有効であることが示された.
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