Research Abstract |
1.マジックマッシュルーム中サイロシン,サイロシビンのLC-TOFMSによる検出: TOF-MS分析は従来比較的分子量の大きい物質分析に適していると考えられていたが,機器の性能の飛躍的向上により,低分子薬毒物分析を高感度,高分解能で行うことが可能になり,本研究を開始した。抽出条件などの予備実験は前年度の実績報告書のとおりである。分離カラムはInertsil 0DS-3(2.1x150mm,粒径5ミクロン),移動相は10mM ammonium formate(_pH3.5)/methano1(80:20),流速0.2ml/min,使用イオンはサイロシンm/z205,サイロシビンm/z285を用いた。その結果,マジックマッシュルームの傘部には,サイロシン41.9μg/g,サイロシビン586μg/gであった。柄部では,それぞれ,44.9ならびに534μg/gであった。 2.強力きのこ毒α-アマニチンのLC-TOFMSによる分析: きのこ毒の中でもドクツルタケやシロタマゴテングタケに含まれるアマニチン類は,特に毒性が強く,数ミリグラムでヒトを死亡させるほどである。従って,この毒素を生物学的化学兵器として使用する事も可能と考えられる。アマニチン類はサイロシンなどよりはるかに分子量が大きく900ダルトン以上の環状ペプチドであり,TOFMS分析に最適と思われる。そのため,とりあえず,α-アマニチンの標準品を用いて,TOFMS分析の詳細を設定してみた。抽出法も種々検討した結果,メタノール抽出を採用した。分離カラムはL-column ODS(2.1x150mm,粒径5ミクロン),移動相は10mM ammonium acetate(pH 5.0)とacetonitrileによるグラジエント法を用い,流速0.2ml/minで8分でacetonitrileが30パーセントの含有量になるように設定した。その結果,基準ピークがm/z919.3787に出現し,分子イオンと考えられる。それに加えてm/z636.4052に比較的大きなピークが観察された。従ってm/z919を用いて定量性を検討したところ,検出限界は注入量で0.05ngと高感度であった。 3.MALDI質量分析イメージングシステムの立ち上げと法医学的応用: 本科学研究費補助金で導入したABI社製QSTAR XL TOFMS装置にはオプションとして,イメージング装置を装着できるため,イメージング解析を可能にした。現在慢性覚せい剤やコカイン中毒モデルラットを用いて,慢性中毒発現メカニズムを解明すべく,鋭意実験をおこなっている。
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