2005 Fiscal Year Annual Research Report
環境の季節変化と地域変異に対するPan属の適応機構の研究
Project/Area Number |
17255005
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
古市 剛史 明治学院大学, 国際学部, 教授 (20212194)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊谷 原一 林原生物化学研究所, 類人猿研究センター, 所長 (70396224)
HUFFMAN Michael 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (10335242)
五百部 裕 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (20252413)
中務 真人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00227828)
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (40379011)
|
Keywords | 霊長類 / 生態学 / 環境 / 地域変異 / 人類進化 / Pan troglodytes / Pan paniscus / ヒト科 |
Research Abstract |
ウガンダ共和国カリンズ森林、タンザニア共和国ウガラ地区、タンザニア共和国ルボンド島のチンパンジー、およびコンゴ民主共和国ワンバ地区のボノボについて、食物パッチの利用に関する生態学的調査を行った。カリンズ森林で得られたデータの予備的分析では、1本の採食樹で雌雄が一緒に採食する場合、(1)雌雄間に直接的な競合行動は見られないこと、(2)オスは熟果が豊富な樹冠上部を使い、メスはやや低い位置で採食すること、(3)1本の果実樹における滞在時間は雌雄で違いがないことがわかった。一方、食物パッチ間の移動については、(4)メスが樹上の木渡りをより頻繁に行い、パッチ間の移動も少ないこと、(5)オスは地上移動をより頻繁に行い、より長距離の移動を行うことがわかった。これらの結果は、食物をめぐる雌雄間の直接競合はほとんど見られず、間接的競合がわずかに見られるにすぎないことや、メスが採食効率を優先した遊動パターンを取るのに対し、オスは他集団との競合や発情メス探しなど、採食以外の目的での遊動を行っていることを示している。雌雄で遊動を決める要因が異なっていることは、一つの社会集団を形成しながらも雌雄が行動をともにしないというチンパンジーの社会構造の生態学的要因となっている可能性がある。一方、ウガンダ共和国において、初期人類の生息環境に近いと思われるウッドランドからサバンナにかけての地域と、チンパンジーの生息限界に相当する疎開林や川辺林の環境の予備的調査を行った。この調査で、川辺林とその周辺のサバンナの間を、カバなどの動物が頻繁に行き来していることがわかった。初期人類の化石の出土する地域から森林性の動物の化石が出土することが多いが、これは必ずしも初期人類の生息地が森林であったことを意味するものではなく、川辺林をねぐらとしてまわりのサバンナを利用していた可能性がある。
|