2005 Fiscal Year Annual Research Report
多重情報表現とその相互作用による前頭連合野情報処理機構の解明
Project/Area Number |
17300103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船橋 新太郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (00145830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久代 恵介 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (60361599)
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Keywords | 前頭連合野 / ワーキングメモリ / 情報表現 / 情報処理 / マカクザル / 単一ニューロン記録 |
Research Abstract |
思考、推論、判断、意志決定などの高次脳機能の遂行には、多様なモダリティーの情報や同一モダリティーの質的に異なる情報を用いた処理が必要である。限られた神経資源を用いてこのような情報処理を素早くかつ柔軟に行うためには、同一神経回路網における多重情報表現が不可欠である。本研究では、マルチモーダルな情報処理による思考や意志決定に深く関わる前頭連合野背外側部ニューロン群の活動を指標に、同一神経回路網上でモダリティーの異なる情報がどのように表現され、処理に供されるのかを解析しようと試みた。空間性・非空間性情報のワーキングメモリをそれぞれ必要とする課題、ならびに報酬条件を操作したこれらの課題を用いて検討した。その結果、前頭連合野背外側部においては、空間情報、非空間情報を表現するニューロンの分布にトポグラフィーは観察されず、両者の分布には重複が見出されたものの、分布の重心位置には違いが見出された。また、視覚情報を表現するニューロンや眼球運動情報を表現するニューロンでは、表現する内容の違いによりその空間分布に違いが見出された。これらの結果は、さまざまな情報がニューロン集団の空間的な発火パターンの違いにより表現されていることを示唆している。さらに、前頭連合野背外側部と前頭眼窩部で報酬出現や報酬期待に関連するニューロン活動を解析した結果、多くのニューロンは報酬に関わる情報と感覚・運動情報を重複して表現していること、しかし、これらの情報を主として表現するニューロンの空間分布は異なること、また、このような空間分布は背外側部と眼窩部で異なることが明らかになった。このように、表現される情報の違いにより発火するニューロン群の空間的なパターンが異なることから、情報処理とは発火するニューロン群の空間的なパターンの変化として捉えられることが示された。しかし、空間的な発火パターンの変化が情報の処理過程を反映していることが明らかになったものの、このような変化を生じる要因は明らかではない。今後、このような変化を生じる要因としてのニューロン間、ニューロン群間の相互作用の解析が必要であることが痛感された。
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