2005 Fiscal Year Annual Research Report
短期記憶から長期記憶への変換に関わるシナプス構造可塑性の誘導過程
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17300118
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塩坂 貞夫 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90127233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 保幸 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (90346320)
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Keywords | ectodomain shedding / セリンプロテアーゼ / ニューロプシン / 神経可塑性 / 記憶 / L1 |
Research Abstract |
記憶現象においてもっとも疑問であるのは"なぜ記憶が何十年もの長期にわたって安定であるか"という点である。古くから記憶研究が盛んにおこなわれてきたにも関わらず意外にもこの問題は長く放置されてきた。我々は1995年より細胞、シナプス接着のダイナミックな変動が動物の長期の記憶に重要であると想定し、シナプスの形態とその構成分子を変化させる新しいメカニズムが必要であると考えてきた。最近電子顕微鏡をもちいた形態学およびアクチンの動態をマーカーとした細胞生物学研究においてシナプスあるいはスパインの形態変化が長期記憶に関係することが示唆されるようになり、構造可塑性が注目されるようになってきた。しかし、シナプス膜、マトリクスのさまざまな分子変化とそれらの相互作用を探索することはほとんどなかったのが実情である。本研究では接着分子のectodomain sheddingとマトリクス蛋白による神経可塑性の調節メカニズムを検討することから、予定される3年間でこのシステムが長期の可塑性に必須であることを証明し、そこにいかなる分子シグナリングが関わるかを明らかとする。 具体的には(1)ニューロプシンから接着分子L1のectodomain sheddingに至る経路の探索、(2)活性型ニューロプシン単独で起こるLTPに関係する受容体、チャネル、シグナル分子群の探索および(3)tPAのLTPへの関与がニューロプシン単独でおこるLTPと同じシグナル系を介するか、について検討する。 本年度は計画の初年度であることから(1)ニューロプシンから接着分子L1のectodomain sheddlngに至る経路の探索から着手した。我々はすでにNMDAや4APをex vivoでバスアプライすると海馬ニューロプシンが一過的に活性化し、ニューロプシン依存性のL1のectodomain sheddingが起こるがリコンビナントニューロプシンによってこの現象はおきないことを明らかとしている。このことから、セリンプロテアーゼ以外のプロテアーゼインヒビターを作用させることによりニューロプシンの活性化後、メタロプロテアーゼ(MMP)の活性化およびL1 sheddingというカスケードの可能性が示唆された。そこですでに作成済み不活性型プロ体のプロリコンビナントNPにくわえて常時活性型リコンビナントNP(caNP)を作成した。今後はこのcaNPを用いてこれによって活性化されるMMPのスクリーニングを行なう予定である。
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