2005 Fiscal Year Annual Research Report
運動習慣が成長期および中高年期の脳形態におよぼす影響
Project/Area Number |
17300199
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 敏彦 東北大学, 高等教育開発推進センター, 講師 (00229048)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正敏 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00125501)
|
Keywords | 脳 / MRI / 運動 / 海馬 / 灰白質容量 / 心理尺度 |
Research Abstract |
海馬が記憶や学習に関わる部位であることは良く知られているが、感情や情動の制御にも中心的な役割を果たしている。うつ病や外傷後ストレス障害などの精神疾患において、海馬体積が減少することが知られており、精神疾患との関係が注目されている。一方、運動が精神的健康の維持増進に効果的であることが心理学的研究から示唆されているが、そのメカニズムはほとんど分かっていない。本研究では、運動の精神的効果と海馬体積の関係を明らかにすべく、運動経験の異なる被検者間で、海馬の構造を比較した。方法:被検者はすべて右利きで健康な男子大学生および大学院生であった。部活動に熱心に参加している学生をアスリート群(22名)、小学校入学以降、ほとんど定期的な運動を行ってこなかった学生をセデンタリー群(26名)とした。高解像度脳MR画像を撮影し、optimized voxel based morphometry(optimized VBM)という手法を用いて両群の海馬内における部位特異的な灰白質量を比較した。また、心理的健康度を自記式の心理尺度で測定した。結果:optimized VBMの結果、アスリート群の両側の海馬尾部における灰白質量がセデンタリー群よりも多いことが分かった。また、アスリート群はセデンタリー群よりも精神的に健康であった。考察:本研究の結果から、運動経験の違いによって、両側海馬尾部の灰白質量が影響を受けることが分かった。動物実験より、運動が海馬の神経細胞増殖を促進することが知られていることから、ヒトにおいても運動によって神経細胞が増えていると考えられる。また、海馬体積の大きなアスリート群がより精神的に健康であったことから、運動の精神的効果に海馬が関与している可能性が示唆された。今後は、運動の身体的健康に及ぼす効果のみならず、脳および精神的健康に及ぼす効果も注目されるだろう。
|
Research Products
(2 results)