Research Abstract |
分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素(BCKDH)は,分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝の律速酵素であり,特異的なキナーゼ(BDK)によるリン酸化で不活性化される。BDKにはBCKDHに結合した結合型と遊離型が存在し,結合型のみが活性を示すことが知られている。これらの酵素活性は食餌や疾病などの影響を受けて変化し,BCAA代謝を調節すると考えられている。一般的に糖尿病ではBCAA代謝が亢進することが報告されている。一方でインスリンがBDKの発現量を高めるという報告がある。これまでの糖尿病ラットの報告ではインスリン欠乏性の1型糖尿病モデル動物を用いており,高インスリン血症である2型糖尿病についての報告はほとんどない。本研究では2型糖尿病モデルラットであるOLETFラットのBCKDH活性の調節について検討し,BCAAの長期摂取がこれらの酵素に与える影響についても検討した。OLETFラットを2型糖尿病モデルラットとし,LETOラットを正常の対照動物として用いた。8週齢時に食餌を標準食又はBCAA(5%)食に分け,[LETO/標準食],[OLETF/標準食],[LETO/BCAA食],[OLETF/BCAA食]の4群に分けた。19週齢時に肝臓及び血液を採取し,BCKDHとBDKの活性及びタンパク質量を測定した。肝BCKDH活性は,LETOラットに比べてOLETFラットで有意に低く,BCKDHの各サブユニットのタンパク質量も有意に減少していた。さらにOLETFラットにおける肝BDKでは,総タンパク質量が有意に減少しているにも関わらず,活性及び結合型のタンパク質量は有意な高値を示した。また,各ラットにBCAA食を摂取させることで肝BCKDH活性が上昇したが,BCKDHサブユニット量は変化しなかった。一方,BDKの総量,結合型量,およびBDK活性が有意に低下した。以上のことから,高インスリン血症であるOLETFラットでは肝臓におけるBCKDH活性の低下は,BCKDHの各サブユニット量の減少及びBDK活性の上昇に起因することが示唆された。また,BCAA食摂取によりOLETFラットのBCKDH活性が上昇したが,これは結合型BDK及びその活性の減少に起因することが示唆された。
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