Research Abstract |
(1)認知機能障害改善システムの有効性に関する臨床的検討 通所施設に通い,適格基準を満たした認知症高齢者90名を,介入群45名,対照群45名に無作為に割付け,対照群には標準的な自転車エルゴメーター駆動,介入群には自転車エルゴメーターを用いた速度フィードバック療法を行った。介入前,介入終了直後,介入終了1ヵ月後のMini-Mental State Examination(MMSE),N式老年者用日常生活動作評価尺度(N-ADL),認知症高齢者QOLスケール(QOL-D)の各評価尺度得点における両群間の差を検討するため,各評価尺度の得点の変化量を従属変数とした二元配置(対応のない因子と対応のある因子)の分散分析を行った結果,MMSE, N-ADL, QOL-Dの各評価尺度得点の変化において両群間に有意な差が認められ,本研究で作成した速度フィードバック療法システムの有効性が示唆された。また,介入終了1ヵ月後のQOL-D得点には,注意力得点の変化量が有意に関連していることが示されたことから,注意機能を高めることが認知機能,ADLを介してQOL向上に有効であることが示唆された。 (2)高次脳機能評価システムおよび脳活動記録システムの開発 健常成人8名に対して,エルゴメーター運動の前後にストループテストを行い,その際の前頭葉脳酸素代謝動態を測定した。測定にあたっては,近赤外線分光装置を用い,脳神経活動に付随した局所酸素代謝を示すと考えられる酸化型ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb),還元型ヘモグロビン濃度(Deoxy-Hb),総ヘモグロビン濃度(Total-Hb)を計測した。2組の光グローブは,ストループテスト中に機能するといわれる頭頂葉部位に照射させるよう前額部左右の眉上に装着し,リアルタイムで同時測定を行った。その結果,40%強度の運動中にOxy-Hbの有意な増加が認められ,その増加は持続した。ストループテスト所要時間は40%強度の運動後に短縮し誤答数は運動前後で変わらなかったことから,40%強度の動的運動により認知機能が向上すること,その認知機能の向上と前頭葉脳酸素動態は関連することが示唆された。
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