Research Abstract |
アジア・ユーラシア大陸は湿潤域から乾燥域までを含み,多様な植生分布を有している.一方,近年の温暖化傾向,急速に進み,人間活動の影響がその水循環プロセスに大きな影響を与えていると考えられる.そして様々な気候,植生を有するアジア・ユーラシア大陸では,その影響の現れ方もまた複雑であるはずである.この様な点を明らかにするために,少なくとも降水量,蒸発量,河川流出量の各水収支項の分布の年々変化を把握する必要があるが,どの項目もこれまでデータの測定点の不足,欠如,データの精度の点から問題が多く,概略的,平均的な状況しか分からなかった.特に,蒸発量に関しては,地点の測定値としては研究目的で求めた値が存在するものの,大陸規模の蒸発量に関しては,不確かなモデルを用いた信頼性の乏しい推定値しか存在しなかった.そこで,本研究では以下の3点を明らかにすることで,本地域における水循環や関係する環境因子の10年程度のスケールでの変化を明らかにし,その相互関係を求めることを目的として研究を進めた. (1)アジア・ユーラシア大陸の蒸発量分布の過去10年間(1986年より1995年)にわたる推定.(2)アジア・ユーラシア大陸上の蒸発量の同10年間の変化と気温,雨量や植生等の環境因子との関係の解明.(3)アジア・ユーラシア大陸より乾燥地域のモンゴル国ヘルレン川流域を選択し,(1),(2)の内容をより詳細に検討することと同時に(1),(2)の検証を行う. 最終年度である平成20年度はこれらの取りまとめをおこなった.これまでの研究で明らかになった(1),(2)の検証のためJ特に(3)の地域のデ一タと比較検討を行った.具体的にはこの地域の3地点50年程度の流量データを用いて,その経年変化を調べた.結果を蒸発量モデルの出力と比較検討し,独立なデータを用いた検証が行った。全体としてこの地域では水文量の変化は10年程度では増減が大きいが,50年全体で見るとその変化は小さいことが分かった,得られた結果は地球惑星科学連合の発表会で報告し,また一部は学会誌へ投稿し掲載れた.
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